【土曜連載21】強く・美しく・動ける体を作る科学|電解質とナトリウムの科学|LiAiL
パパ、Vol.20で水分補給の大切さは分かったんだけど、お客さんが「とにかく水をたくさん飲んでおけば安心」って毎回2リットルくらい一気飲みしてるんだよね……それって良いことだよね?🐾
実はそれ、条件によっては危険なのよ。水だけを大量に摂ると、体内のナトリウム濃度が薄まる「低ナトリウム血症」のリスクがあるの。パパ、電解質の役割を語りなさい。🐾
皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
(👉 代表・乳井の詳しいプロフィールはこちら)
13年間の医療機器業界でのキャリアの中で、水分と電解質のバランスがいかに繊細な管理を要するかを数多くの現場で見てきました。パワーリフティング競技者として計量前後の体調管理をする際も、「水だけ」では体調を崩すことを経験的に理解しています。
今回のVol.21では、Vol.20で解説した水分補給に続いて、なぜ「水だけ」では不十分な場合があるのか、ナトリウムを中心とした電解質の役割を科学的に解説します。
(👉 【土曜連載Vol.20】水分補給とパフォーマンスの科学はこちら)
(👉 【土曜連載Vol.11】ピーキングとテーパリングの科学はこちら)
(👉 【土曜連載Vol.14】呼吸法とバルサルバ手技の科学はこちら)
「たくさん水を飲む」ことは、必ずしも「万全の水分補給」を意味しません。むしろ状況によっては逆効果になり得ます。
1. 「水さえ飲んでいれば大丈夫」という誤解
汗には水分だけでなく、ナトリウム・カリウム・カルシウム・マグネシウムといった電解質も含まれています。特にナトリウムは汗に含まれる電解質の中で最も多く、血液量の維持や神経伝達、筋収縮に不可欠な役割を果たします。
水だけを大量に摂取すると、血液中のナトリウム濃度が相対的に薄まります。長時間の運動中に水分だけを摂り続けた結果、血中ナトリウム濃度が低下する「運動関連性低ナトリウム血症(EAH)」は、実際にマラソンなどの長時間競技で報告されている深刻なリスクです。研究では、この状態は「ナトリウム不足」よりも「過剰な水分摂取」そのものが主な原因であることが指摘されています。
2. 科学的根拠——ナトリウムが果たす役割と摂取量の目安
① 発汗中のナトリウム濃度には個人差が10倍もある
米国スポーツ医学会(ACSM)の公式見解(Sawka MN, et al., Medicine & Science in Sports & Exercise, 2007)では、発汗中のナトリウム濃度は1リットルあたり約200mgから2,000mg超まで、個人差にして約10倍の幅があることが示されています。運動後に肌や衣服に白い塩の結晶が目立つ「塩っ辛い汗」タイプの人ほど、より多くのナトリウム補給が必要になります。
② 運動時間に応じた摂取目安
同見解では、60分未満の運動であれば水分のみで基本的に十分である一方、60〜120分の運動では水分1リットルあたり300〜600mgのナトリウム、2時間を超える運動では600〜1,000mgのナトリウムを目安に補給することが推奨されています。ナトリウムを含む飲料は、水分を細胞外液に保持しやすくし、ただ水を飲むよりも体内への水分保持効率が高いことも報告されています。
📚 専門的エビデンス
Sawka MN, Burke LM, Eichner ER, et al. “American College of Sports Medicine position stand: Exercise and fluid replacement.” Medicine & Science in Sports & Exercise, 2007.
PubMedで詳しく見る
本ポジションスタンドは、水分・電解質補給に関する最も権威ある公式見解の一つです。運動時間ごとの具体的なナトリウム摂取目安を示しており、「水分補給=水を飲むこと」という単純化した理解を修正する重要な指針となっています。
3. LiAiLが実践する電解質補給設計——Vol.20との連携
実際の指導では、Vol.20で解説した「トレーニング前後の体重変化」に加えて、運動時間が60分を超えるセッションや、発汗量が多い夏場のセッションでは電解質を含む飲料を選択することを推奨しています。
パワーリフティング競技者の計量(Vol.11参照)においても、水分と塩分の操作は密接に関わっており、専門知識のない自己流の管理は健康リスクを伴います。またVol.14で解説したバルサルバ手技による一時的な血圧上昇も、電解質バランスが崩れた状態ではより負担が大きくなる可能性があるため、両者を切り離さずに管理することが重要です。
LiAiL式「電解質補給を正しく設計する5つの科学的介入」

- 60分未満のセッションは水分のみで基本的に問題ない:通常のジムトレーニングであれば、多くの場合水だけで十分対応できます。
- 60分を超える・発汗量が多い日は電解質を意識する:1リットルあたり300〜600mgのナトリウムを目安に、スポーツドリンクや電解質タブレットを活用します。
- 「塩っ辛い汗」タイプは補給量を多めにする:衣服に白い塩の跡がつきやすい人は、標準的な目安より多めのナトリウム補給を検討します。
- 自分の発汗速度を目安に飲みすぎを避ける:短時間で大量の水を一気に飲むことは避け、こまめな摂取を心がけます。
- 計量を伴う競技の水分・塩分操作は専門家と管理する:Vol.11で解説したピーキング期の体重調整は、健康リスクを伴うため必ず専門知識に基づいて行います。
※高血圧など塩分摂取に制限がある方は、電解質補給の方針について必ず医師に相談してください。頭痛・吐き気・意識の混濁などの症状がある場合は、低ナトリウム血症を含む重篤な状態の可能性があるため直ちに医療機関を受診してください。
まとめ:「水分補給」は水とナトリウムのセットで考える
土曜連載Vol.1〜21の流れを振り返ります。
- Vol.1:神経系が重量を支配する
- Vol.2:セット数・レップ数が筋肥大を決める
- Vol.3:下ろす動作(エキセントリック)が筋肉を育てる
- Vol.4:メカニカルテンションと代謝ストレスが相乗する
- Vol.5:漸進性過負荷が成長の絶対条件
- Vol.6:レップ帯ごとに効果が異なる
- Vol.7:インターバルが筋力・筋肥大を左右する
- Vol.8:頻度が回復と成長のバランスを決める
- Vol.9:期分けが全ての要素を年間設計にまとめる
- Vol.10:オートレギュレーションが設計図を現場で機能させる
- Vol.11:ピーキングとテーパリングが疲労を記録に変換する
- Vol.12:リカバリー手段は目的に応じて選ぶべきもの
- Vol.13:ストレッチはタイミングで味方にも敵にもなる
- Vol.14:呼吸が脊柱を支える天然のベルトになる
- Vol.15:止まる場所には生体力学的な理由がある
- Vol.16:可変抵抗で弱点を狙い撃つことができる
- Vol.17:筋肉痛は成長の証明ではなく回復のサイン
- Vol.18:サプリメントは成分ごとに根拠の強さが全く違う
- Vol.19:タイミングより総摂取量が筋肥大を左右する
- Vol.20:わずかな脱水でも筋力・パワーは低下する
- Vol.21:水分補給は水とナトリウムのセットで考える
次週Vol.22では、「睡眠の科学——トレーニング効果を最大化する睡眠時間と質」を解説します。栄養・水分の次は、多くの人が最も軽視しがちな「睡眠」という回復の土台です。
✒️ 執筆者プロフィール
乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表
米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムースとウメを娘のように愛する、誠実な伴走者。
🎁 本気で身体を変えたいあなたへ
通常3,000円 → 【選べる3段階の入り口】
- 本気で変わりたい方: 体験トレーニング予約(2,500円・スタッフ指名可)
- まずは相談したい方: 公式LINEでの無料相談・質問(24時間受付)
- まだ迷っている方: LINE登録で「一生モノの美肌&痩身ロードマップPDF」をプレゼント
👉 【LiAiL公式LINE】を登録して、350日連載を並走する
LiAiL 運営会議:本日のまとめ
「水を飲みすぎるのも危険」って、Vol.20の脱水の話と合わせて考えると、水分管理って両側に気をつけなきゃいけないんだね🐾
オレも夏はよく塩を舐めたくなるんだが、あれって身体が「ナトリウムをくれ」って言ってるサインなのか?🐾
小太郎、それはあながち間違いじゃないわ。来週Vol.22は「睡眠の科学」——トレーニング効果を最大化する睡眠時間と質を解説するわ。🐾











