【月曜連載22】医療現場が教えるカラダの真実|睡眠時無呼吸症候群と体づくり——医療現場が教える「眠っているのに疲れが取れない」理由|LiAiL

2026.10.12

パパ、お客様が「8時間寝てるのに、朝からずっと疲れてる」「家族にいびきがひどいって言われる」って悩んでたんだけど、これって睡眠の質の問題なの?🐾

ムース、「寝ているのに疲れが取れない」は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインかもしれないわ。睡眠時間ではなく「眠っている間に何が起きているか」が問題なの。パパ、手術現場で見てきた知見を語りなさい。🐾

皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
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前回Vol.21では「体温調節と暑熱順化」についてお伝えしました。今週Vol.22は、13年間の医療現場経験の中で、全身麻酔の手術前後に「睡眠中の呼吸」が重要視される場面を数多く見てきた立場から、「睡眠時無呼吸症候群と体づくり——医療現場が教える『眠っているのに疲れが取れない』理由」を解説します。

(👉 【月曜連載Vol.21】体温調節と暑熱順化はこちら)
(👉 【月曜連載Vol.19】呼吸パターンと自律神経はこちら)
(👉 【月曜連載Vol.12】糖尿病患者の運動処方はこちら)
(👉 【月曜連載Vol.4】心臓手術現場から学ぶ運動の真実はこちら)

「睡眠時間は足りているのに疲れが取れない」「トレーニングしているのに体が変わらない」——その原因は、食事やトレーニングではなく、夜間の呼吸が止まることで、睡眠そのものが分断されていることにあるのかもしれません。


1. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは——「いびき」の奥で起きていること

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に10秒以上呼吸が止まる(または極端に浅くなる)状態が繰り返し起こる病態です。多くは眠っている間に喉の奥の空気の通り道(上気道)が狭くなり、塞がってしまう閉塞性のタイプで、大きないびきや、いびきの途中で一瞬静かになる(呼吸が止まっている)ことが特徴的なサインです。

重症度は、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)で評価され、一般的に5〜15回が軽症、15〜30回が中等症、30回以上が重症とされています。呼吸が止まるたびに脳は軽い覚醒反応を起こして呼吸を再開させるため、本人は朝まで寝ていたつもりでも、実際には睡眠が何十回、何百回と細切れにされていることがあります。これが「寝ているのに疲れが取れない」の正体です。


2. SASが体づくりを妨げる「4つのメカニズム」

① 深い睡眠の減少——回復・成長ホルモン分泌への悪影響

木曜Vol.4で解説した通り、成長ホルモンは主に深いノンレム睡眠中に分泌されます。無呼吸による覚醒反応の繰り返しは、この深い睡眠を妨げます。トレーニングで傷ついた筋肉の修復や脂肪の代謝に必要な「夜の回復時間」が十分に確保できなくなり、頑張っているのに結果が出にくい状況を生み出す一因になります。

② 交感神経の過剰な活性化——血圧・心臓への負担

呼吸が止まると血中の酸素が低下し、体は危機を感じて交感神経を強く働かせます。Vol.19で解説した自律神経バランスの乱れが、夜間に繰り返し起こっているイメージです。この状態が続くと、夜間・早朝の血圧上昇や不整脈との関連が指摘されており、Vol.4で扱った心臓・運動生理学の視点からも、SASは見逃せない要因です。

③ インスリン抵抗性と食欲ホルモンの乱れ

睡眠の質の低下は、血糖を調整するインスリンの効きを悪くし(Vol.12参照)、食欲を高めるホルモン(グレリン)と満腹感に関わるホルモン(レプチン)のバランスにも影響することが報告されています。結果として、日中の甘いものや高カロリー食への欲求が強まり、体重管理が難しくなる傾向があります。

④ 「太る→無呼吸→疲れる→動けない→さらに太る」の悪循環

体重増加、特に首周りや内臓脂肪の増加は上気道を狭める要因となり、SASを悪化させます。SASによる日中の強い眠気・倦怠感は運動意欲や活動量を下げ、さらに体重が増えるという悪循環が生まれます。ただし逆に言えば、この循環のどこかを断ち切れば、全体が好転する可能性もあります。

📚 専門的エビデンス
Peppard PE, et al. “Longitudinal Study of Moderate Weight Change and Sleep-Disordered Breathing.” JAMA, 2000.
PubMedで詳しく見る

本研究は約700名を4年間追跡した縦断研究で、体重が10%増加するとAHI(無呼吸・低呼吸指数)が約32%増加し、逆に体重が10%減少するとAHIが約26%低下することを示しました。体重の変化が睡眠中の呼吸状態に直接影響することを定量的に示した代表的な文献です。(数値は論文報告にもとづく概数です)


3. LiAiL式「睡眠の質を守り、体づくりを後押しする5つの介入」

  1. 疑わしいサインがあれば、まず受診する:大きないびき、睡眠中の呼吸停止を指摘された、日中の強い眠気、起床時の頭痛などがある場合は、呼吸器内科・睡眠外来などで検査を受けます。診断はセルフチェックではできず、専門的な検査が必要です。
  2. 体重管理を無理のない範囲で進める:上記の研究が示すように、体重の変化はAHIに影響します。極端な減量ではなく、レジスタンストレーニングで筋肉量を維持しながら、緩やかに体脂肪を落としていく設計が基本です。
  3. 就寝前の飲酒を控える:アルコールは喉周りの筋肉を弛緩させ、いびき・無呼吸を悪化させやすいことが知られています。就寝直前の飲酒は特に避けることが望ましいです。
  4. 寝姿勢を工夫する:仰向けは舌や軟口蓋が喉の奥に落ち込みやすく、気道が狭くなりやすい姿勢です。横向きで寝ると症状が軽くなるタイプの方もいます。ただし効果には個人差があります。
  5. 診断を受けた場合は、治療を自己判断で中断しない:CPAP(持続陽圧呼吸療法)などの治療が処方された場合、体づくりと並行して継続することが重要です。治療内容の変更や中止は、必ず主治医に相談してください。また、運動や減量を開始する際も、持病がある方は事前に主治医へ確認してください。

まとめ:体づくりの結果は「トレーニング」だけでなく「夜の呼吸」にも左右される

月曜シリーズこれまでの流れを振り返ります。

  • Vol.1〜5:脂肪・姿勢・脊椎・心臓・関節——手術現場が教える体の構造的真実
  • Vol.6〜8:骨・腱靭帯・神経——組織修復と力学的刺激の関係
  • Vol.9〜14:がん・透析・糖尿病・妊娠・高齢者——制約のある体を支える運動設計
  • Vol.15〜21:「見えないプロセス」——痛み・むくみ・呼吸・脱水・体温の奥にある機能の話
  • Vol.22:睡眠中の呼吸の乱れが、回復・代謝・体重管理に影響する

次週Vol.23では、「貧血と運動——医療現場が教える『隠れ貧血』を見逃さない視点」を解説します。疲れやすさ・息切れの背景にある、もう一つの見落とされやすい要因に迫ります。


✒️ 執筆者プロフィール

乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表

米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムース・ウメ・小太郎を家族のように愛する、誠実な伴走者。

(👉 代表・乳井の詳しいプロフィールはこちら)
(👉 note「臨床解剖学(図解)」トレーナー向け解説記事はこちら)


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LiAiL 運営会議:本日のまとめ

8時間寝ても、睡眠が細切れになってたら回復できないんだね。体重10%の変化でAHIがこんなに動くのも驚き!🐾

いびきがひどいって言われたら、笑い話にせずに検査を受けた方がいいってことだな。オレも気をつけよう🐾

小太郎、その通りよ。来週Vol.23は「貧血と運動」——隠れ貧血を見逃さない視点を解説するわ。🐾


川越パーソナルジムLiAiL代表乳井雅和

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