【金曜連載02】競技者の計画的減量|体重階級制のプロ戦略と一般への応用|LiAiL
パパ、試合前に急激に体重を落とす選手をSNSで見たんだけど、あれって身体に大丈夫なの?サウナで汗かいて絞るやつ……🐾
それは「水抜き」ね。プロがやる減量には、素人が真似してはいけない戦略と、一般人にも応用できる本物の知恵が混在しているの。パパ、競技者の減量の「真実」を語りなさい。🐾
皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
(👉 代表・乳井の詳しいプロフィールはこちら)
先週のVol.1では、ダイエットの根底にある「三大変数(メンテナンスカロリー・ディフィシット・PFCバランス)」の設計図をお伝えしました。今週は、その設計図を極限まで精緻化した世界——「競技者の計画的減量」の世界へ踏み込みます。
私は格闘技から始まり、ボディメイク、パワリフティングの減量、水抜を経験し、自らの身体で計画的減量を実践してきました。また、ボディコンテスト出場選手・格闘家・各プロアスリート・パワーリフター競技者への指導経験から、「プロの減量戦略」の本質を熟知しています。
今回は、競技者が用いる減量の科学を体系的に解説し、一般の方が真似してはいけない部分と、日常のダイエットに応用できる本物の知恵を明確に分けてお伝えします。
1. 競技者減量の「2つのフェーズ」——プロが絶対に混同しないこと
競技者の減量を理解する上で最も重要な前提が、減量には全く性質の異なる2つのフェーズが存在するという事実です。この2つを混同した減量が、多くの競技者とダイエッターを破滅に導きます。
フェーズ①:ロングターム・ダイエット(数週間〜数ヶ月)
試合の数ヶ月前から開始する「本質的な減量」です。Vol.1でお伝えした三大変数——適切なカロリーディフィシット(週に体重の0.5〜1%)、高タンパク食、筋トレの継続——を用いて、脂肪組織を実際に減らすフェーズです。このフェーズでは筋肉量の維持が最優先課題となります。
フェーズ②:ピーキング(試合直前72〜24時間)
計量直前に行う「水分・グリコーゲンの操作」です。これはいわゆる「水抜き」を含む短期的な体重調整であり、脂肪を燃やしているわけではありません。体内の水分とグリコーゲン貯蔵量を一時的に操作しているに過ぎず、計量後の適切な水分・栄養補給(リフィード)によって速やかに回復させることが前提となっています。
一般の方がSNSで見ている「試合前の急激な減量」の多くはフェーズ②であり、これを日常のダイエットに応用することは危険です。本記事では、一般の方にも応用可能なフェーズ①の科学を中心に解説します。

2. プロが実践する「脂肪のみを削る」技術
① タンパク質の「防衛ライン」を設定する
競技者の減量において、タンパク質摂取量は増量期よりも高く設定します。これは一見逆説的に思えますが、カロリーが制限された状態では、体がタンパク質をエネルギーとして利用しようとするため、筋肉の分解を防ぐには通常時以上のタンパク質が必要になるからです。
LiAiLで競技者に推奨する基準は除脂肪体重1kgあたり2.2〜3.1gのタンパク質です。これは一般的な推奨量(体重1kgあたり0.8g)の3〜4倍に相当します。
📚 専門的エビデンス
Helms ER, et al. “A systematic review of dietary protein during caloric restriction in resistance trained lean athletes: a case for higher intakes.” International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism, 2014.
PubMedで詳しく見る
本研究は、カロリー制限下のリーンな競技者において、高タンパク食(除脂肪体重1kgあたり2.3〜3.1g)が筋肉量の維持に最も有効であることを示したシステマティックレビューです。
② カーボサイクリング——炭水化物を「戦略的に」使う
競技者が用いる高度な栄養戦略の一つがカーボサイクリングです。これは炭水化物の摂取量をトレーニング強度に合わせて変動させる手法です。
- 高強度トレーニング日(ハイカーボ):炭水化物を多めに摂取し、筋グリコーゲンを補充してパフォーマンスを維持します。mTORの活性化にも貢献します。
- 低強度・休養日(ローカーボ):炭水化物を抑え、脂質をエネルギー源として利用する「脂肪適応」を促進します。インスリンを低く保つことで脂肪分解を優位にします。
この戦略の核心は、「燃やす日」と「溜め込まない日」を意図的に設計することにあります。一律のカロリー制限では得られない、体組成の精密なコントロールが可能になります。
③ トレーニングボリュームの「戦略的削減」
多くの人が減量期に犯す最大のミスが、カロリーを減らしながら運動量を増やすことです。これは木曜Vol.2で解説したコルチゾールを慢性的に上昇させ、筋肉の分解を加速させます。
プロの競技者は減量期に、トレーニングの強度は維持しながらボリューム(総セット数)を削減します。重量を落とさないことで神経系への刺激を維持し、筋肉に「まだこの重量が必要だ」という信号を送り続けます。「使わない筋肉は失われる」——この生理学的原則が、減量期の筋肉維持の核心です。
3. 私自身の93kg級への「設計図」
ここで、私自身のパワーリフティング競技における減量経験をお伝えします。
私のオフシーズン体重は95〜97kg程度です。93kg級で出場するためには、2〜4kgの減量が必要になります。私が実践する設計図は以下の通りです。
このプロセス全体を通じて最も重要なのは、「焦らないこと」です。急激な減量は筋力低下・ホルモン乱れ・免疫機能低下を招き、試合でのパフォーマンスを確実に損ないます。
- 試合12週前:メンテナンスカロリーから1日200〜300kcalのディフィシットを設定。週に0.3〜0.5%のペースで体重を落とし始めます。この段階では筋力への影響をほぼゼロに抑えられます。
- 試合8週前:カーボサイクリングを導入。高強度トレーニング日のみ炭水化物を維持し、それ以外の日は削減します。
試合4週前:水分・塩分の「ベースライン測定」と微調整開始
この時期は、本格的な水抜きではなく「身体の反応を観察するフェーズ」です。
塩分のコントロール:
通常、日本人の平均塩分摂取量は1日8〜10g程度です。この時期からナトリウム摂取量を1日3〜4gへと段階的に削減します。これにより細胞外液(皮下の水分)が緩やかに減少し始めます。急激な塩分カットはアルドステロンの反動分泌(リバウンド浮腫)を招くため、必ず段階的に行います。
水分摂取量のモニタリング:
この時期はまだ水分を制限しません。むしろ1日3〜4Lの十分な水分を摂取し続けることで、身体のADH(抗利尿ホルモン)の分泌を抑制し、水分を「溜め込みにくい状態」に慣らします。
炭水化物の微調整:
グリコーゲン1gに対して水分約3gが結合するという特性を利用し、炭水化物摂取量を徐々に削減することで皮下水分量を調整します。ただし、トレーニング強度を維持するために完全なローカーボは行いません。
試合1週前:ピーキングプロトコルの実施
試合7日前〜5日前(ウォーターローディング):
逆説的ですが、まず水分摂取量を1日6〜8Lへと意図的に増加させます。これにより腎臓の利尿機能が活性化し、ADHの分泌が抑制されます。身体が「水分が過剰にある」と判断し、積極的に排泄モードへと移行します。
試合4日前〜2日前(ウォーターカット開始):
水分摂取量を段階的に削減します。4日前:2〜3L/日 3日前:1〜1.5L/日 2日前:500mL〜1L/日
ウォーターローディングで活性化した利尿機能がそのまま継続するため、摂取量を減らすだけで自然に体内水分量が低下します。この「仕掛け」なしに急激な水抜きを行うのが、多くの競技者が犯す最大のミスです。
試合2日前(グリコーゲン枯渇と炭水化物カット):
筋グリコーゲンの枯渇を促すため、炭水化物摂取を極限まで削減します。グリコーゲン1gに結合している水分約3gが解放され、体外へ排出されます。タンパク質と脂質は維持し、筋肉の分解を防ぎます。
計量後のリフィード(最重要):
計量通過後、速やかな水分・電解質・炭水化物の補給を行います。水分:計量後2時間以内に500〜1000mLの電解質飲料(ナトリウム・カリウム含有) 炭水化物:体重1kgあたり1〜1.5gの消化しやすい炭水化物(白米・うどん等)を2〜3回に分けて摂取 タンパク質:30〜40gのタンパク質を同時に摂取し、筋肉の修復シグナルを開始。適切なリフィードにより、試合時のパフォーマンスは計量時から劇的に回復します。私の経験では、適切なリフィードで筋力が計量前の状態を上回るケースも珍しくありません。
⚠️ 重要な注意事項
以下のプロトコルは、競技経験のある選手が専門の指導者のもとで行うものです。自己判断での実施は、重篤な電解質異常・脱水症状・腎機能障害を引き起こす可能性があります。一般の方のダイエット目的での使用は厳禁です。LiAiLでは競技者への個別指導の中でのみ、このプロトコルを提供しています。
📚 専門的エビデンス(ピーキング・リフィード)
Reale R, et al. “Acute-Weight-Loss Strategies for Combat Sports and Applications to Olympic Success.” International Journal of Sports Physiology and Performance, 2017.
PubMedで詳しく見る
本研究は、格闘技・体重階級制競技における急速減量プロトコルと、計量後のリカバリー戦略を包括的にレビューしたものです。ウォーターローディング→ウォーターカットの有効性と、リフィードのタイミング・組成について詳細に論じています。
4. 一般の方への応用——プロ戦略から学ぶ「3つの原則」
競技者の減量戦略は、一般の方のダイエットにも応用できる普遍的な原則を含んでいます。
- タンパク質を「防衛ライン」として設定する:ダイエット中こそ、タンパク質摂取を通常より増やす。「食べながら痩せる」ための最重要栄養素です。
- 運動量ではなく「強度」を維持する:カロリーを減らしたからといって、トレーニングの重量まで下げる必要はありません。筋肉への刺激を維持することが、代謝の低下を防ぐ鍵です。
- 「期間」を決めて設計する:プロは必ず「〇週間で〇kg」という明確な設計図を持ちます。漫然とダイエットを続けるのではなく、期間と目標を設定することで、コルチゾールの慢性上昇を防げます。

まとめ:減量は「芸術」ではなく「工学」である
競技者の計画的減量が示すのは、体重のコントロールが才能や根性の問題ではなく、生理学と栄養学に基づいた「設計と実行」の問題であるということです。
正しい設計図があれば、筋肉を残しながら脂肪だけを削ることは、科学的に達成可能な目標です。次週Vol.3では、この減量戦略をさらに深掘りし、「女性と男性の減量における生理学的な決定的違い」——なぜ同じやり方が男女で異なる結果をもたらすのかを解説します。
✒️ 執筆者プロフィール
乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表
米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムースとウメを娘のように愛する、誠実な伴走者。
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LiAiL 運営会議:本日のまとめ
パパ自身の減量スケジュールが出てきたのが最高だった!「12週前から始める」って、プロってそんなに長期で計画するんだね!🐾
オレも来週の健康診断に向けて、今日からダイエット始めようと思うんだが……パパ、1週間で3kgは無理か?🐾
小太郎、それは今日の記事の「やってはいけない例」そのものよ。来週Vol.3は「女性と男性の減量の決定的な違い」。同じやり方でなぜ結果が変わるのか、生理学で完全解明するわ。🐾











