【月曜連載16】医療現場が教えるカラダの真実|脳震盪と運動|見えない損傷からの安全な復帰プロトコル|LiAiL

2026.08.31

パパ、部活で頭をぶつけた子が「もうフラフラしないから大丈夫」って翌日から練習に出てたんだけど、それって大丈夫なの?🐾

ムース、それは非常に危険な判断よ。脳震盪はVol.15で学んだ「痛みがない=治った」の中でも最も見えにくく、最も慎重な判断が必要な外傷なの。パパ、脳震盪の本当の怖さを語りなさい。🐾

皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
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前回Vol.15では「スポーツ外傷からの復帰基準」についてお伝えしました。今週Vol.16は、外傷の中でも最も判断が難しいとされる「脳震盪と運動|見えない損傷からの安全な復帰プロトコル」を解説します。

(👉 【月曜連載Vol.15】スポーツ外傷からの復帰基準はこちら
(👉 【月曜連載Vol.8】神経修復と運動はこちら
(👉 【月曜連載Vol.14】高齢者の転倒予防はこちら

「フラフラしないから大丈夫」「意識を失っていないから軽症」これは現場でよく見られる危険な判断です。しかし脳震盪はCTやMRIでも異常が映らないことが多く、「見た目の正常さ」が最も当てにならない外傷の一つです。


1. 脳震盪とは何か「画像に映らない損傷」の恐ろしさ

脳震盪は、頭部への直接的な衝撃、あるいは体への衝撃が頭部に伝わることで脳が急激に加速・減速し、脳内の神経細胞レベルで機能異常が生じる外傷です。意識消失を伴わないケースが大半であり、骨折や靭帯損傷のように画像診断で明確に確認できないという特徴があります。

最も危険なのは、脳震盪から完全に回復する前に再び頭部に衝撃を受けると、通常より軽微な衝撃でも重篤な脳損傷(セカンドインパクト症候群)を引き起こす可能性があるという点です。まれではあるものの、若年アスリートにおいて致命的な転帰をたどる報告があり、国際的なスポーツ医学界がこの問題に強い警鐘を鳴らしています。


2. 見逃してはいけない「4つの警告サイン」

身体症状|頭痛・めまい・吐き気

受傷直後だけでなく、数時間〜翌日にかけて症状が遅れて出現するケースが少なくありません。頭痛、めまい、吐き気、光や音への過敏さなどが代表的な症状です。受傷直後に「大丈夫そう」に見えても、時間経過とともに症状が悪化するパターンがあることを理解しておく必要があります。

認知症状|集中力低下・記憶の混乱

「ぼーっとする感じがする」「考えがまとまらない」「直前の出来事を覚えていない」といった症状は、周囲から見えにくいため見過ごされがちです。学業やデスクワークへの集中力低下という形で現れることも多く、本人も「疲れているだけ」と誤認しやすい点に注意が必要です。

情緒症状|イライラ・不安感の増大

普段より怒りっぽくなる、不安が強くなる、涙もろくなるといった情緒面の変化も脳震盪の症状として報告されています。周囲からは「性格が変わった」と誤解されることもありますが、これも回復すべき症状の一つとして扱われます。

睡眠症状|過眠・不眠

普段より眠気が強い、逆になかなか寝付けないといった睡眠パターンの変化も脳震盪後によく見られる症状です。木曜シリーズで解説してきた睡眠と回復の関係は、脳震盪からの回復においても重要な要素です。

📚 専門的エビデンス
Patricios JS, et al. “Consensus Statement on Concussion in Sport: The 6th International Conference on Concussion in Sport.” British Journal of Sports Medicine, 2023.
PubMedで詳しく見る

本コンセンサスステートメントは国際的なスポーツ脳震盪会議による最新の合意文書で、脳震盪の定義、症状評価、そして本記事で紹介する段階的競技復帰プロトコルの標準的な枠組みを提示しています。「症状がないこと」だけでなく、各段階での運動負荷に対する反応を確認しながら復帰を進める重要性が強調されています。


3. LiAiL式「脳震盪からの安全な復帰5ステップ」

  1. 受傷直後はその場でプレーを中止させる:「様子を見て続行」は絶対に避けるべき判断です。頭部への衝撃が疑われた時点で、症状の有無にかかわらず競技を中止し、医療専門職の評価を受けます。
  2. 症状が完全に消失するまで心身の安静を保つ:受傷後24〜48時間程度は、身体的休息に加え、画面を見る作業や読書など脳に負荷をかける活動も控えることが推奨されています。
  3. 段階的競技復帰プロトコルに従う:国際的な指針では、症状消失後、日常活動→軽い有酸素運動→競技特異的運動→非接触トレーニング→フルコンタクト練習→試合復帰という段階を、各段階24時間以上空けながら進めることが推奨されています。各段階で症状が再燃した場合は前段階に戻ります。
  4. 「症状がない」だけで判断しない:Vol.15と同様、主観的な体感だけでなく、医療専門職による認知機能評価などを含めた総合的な判断が必要です。
  5. 必ず医師の診断・許可のもとで復帰を進める:脳震盪は自己判断や指導者・保護者の判断だけで復帰を進めるべき外傷ではありません。頭部外傷が疑われる場合は、必ず医療機関を受診し、専門医の評価に基づいて復帰時期を決定してください。

まとめ:脳震盪は「見えない」からこそ、段階を飛ばさない復帰が命を守る

月曜シリーズこれまでの流れを振り返ります。

  • Vol.1〜5:脂肪・姿勢・脊椎・心臓・関節|手術現場が教える体の構造的真実
  • Vol.6〜8:骨・腱靭帯・神経|組織修復と力学的刺激の関係
  • Vol.9〜14:がん・透析・糖尿病・妊娠・高齢者|制約のある体を支える運動設計
  • Vol.15〜16:「痛みがない」「症状がない」だけでは復帰判断はできない

次週Vol.17では、「手術跡・瘢痕組織と可動域制限|医療現場が教える『癒着』のリアル」を解説します。目に見える傷跡の内側で何が起きているのかを、手術現場の視点から掘り下げます。


✒️ 執筆者プロフィール

乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表

米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムース・ウメ・小太郎を家族のように愛する、誠実な伴走者。

(👉 代表・乳井の詳しいプロフィールはこちら

(👉 note「臨床解剖学(図解)」トレーナー向け解説記事はこちら


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LiAiL 運営会議:本日のまとめ

症状が数時間後に出てくることがあるなんて怖い……「その場で大丈夫そう」を信じすぎちゃいけないんだね🐾

段階を24時間以上空けて進めるって、焦らず着実にってことだな。オレも頭は大事にしないと🐾

小太郎、その通りよ。来週Vol.17は「手術跡・瘢痕組織と可動域制限」「癒着」のリアルを医療現場の視点から解説するわ。🐾


川越パーソナルジムLiAiL代表乳井雅和

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