【木曜連載11】最新論文から読み解く美と健康|レプチン抵抗性—なぜ痩せてもリバウンドしてしまうのか|LiAiL

2026.07.23

パパ、頑張ってダイエットして痩せたのに、少し気を抜いたらすぐリバウンドしちゃったってお客さんがいたんだけど……なんで痩せた後の方が太りやすくなるの?🐾

それは意志の弱さじゃないの、ムース。「レプチン抵抗性」という脳の司令塔の誤作動が原因よ。パパ、20,000セッション以上の指導の中で見てきた「リバウンドする人」と「体重を維持できる人」の違いを、このホルモンの視点から語りなさい。🐾

皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
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Vol.10ではGLP-1という「食欲を抑えるホルモン」を解説しました。今回Vol.11は、その対極にある——「レプチン抵抗性——なぜ痩せてもリバウンドしてしまうのか」という、体重管理における最大の壁を科学的に解説します。

(👉 【木曜連載Vol.4】睡眠と成長ホルモンはこちら
(👉 【木曜連載Vol.9】マイオカインが脂肪・脳・骨密度を変える分子生物学はこちら
(👉 【木曜連載Vol.10】GLP-1が食欲・血糖・体重を操る科学はこちら
(👉 【火曜連載Vol.4】更年期前後のホルモン変化はこちら

「リバウンドは意志の弱さ」——これは大きな誤解です。体重を落とした後の脳は、生理学的に「元の体重に戻そうとする」方向に強く働きます。その中心にいるのがレプチンというホルモンです。


1. レプチンとは何か——脂肪細胞が発する「体重維持の司令塔」

レプチン(Leptin)は1994年に発見された、脂肪細胞そのものから分泌されるホルモンです。ギリシャ語の「leptos(痩せた)」が語源で、発見当初は「食べても食べても満腹にならないマウス」の研究から見つかりました。

レプチンは脳の視床下部弓状核に作用し、「体に十分な脂肪(エネルギー貯蔵)がある」ことを伝える信号を送ります。脂肪量が増えればレプチンも増加し、脳はそれを感知して食欲を抑制する——これが本来のシステムです。しかし、体重管理においてはこのシステムが「思った通りに」働かないケースが非常に多く発生します。

肥満の方は、実はレプチン濃度が「不足」しているのではなく、むしろ「過剰」であることがほとんどです。脂肪量に比例してレプチンは増えているにもかかわらず、脳がその信号に反応しなくなっている状態——これが「レプチン抵抗性」です。


2. なぜ痩せた後にリバウンドしやすいのか——「適応的熱産生」の罠

体重減少とともにレプチンが「不釣り合いに」急落する

体重を落とすと脂肪量が減るため、当然レプチン濃度も低下します。問題は、この低下幅が失った脂肪量から予測される以上に大きいことです。脳はこれを「エネルギー不足の危機」と誤認し、生存本能として食欲亢進・代謝抑制のスイッチを入れます。

「適応的熱産生」による基礎代謝の低下

体重減少後、体は理論上の予測値よりも少ないカロリーで生命維持を行おうとします。これを適応的熱産生(Adaptive Thermogenesis)と呼びます。これは意志の問題ではなく、レプチン低下が引き金となった脳・甲状腺・交感神経系の連動した生理反応です。

複数ホルモンの「同時多発的」な変化

体重減少後はレプチンの低下だけでなく、Vol.10で解説したGLP-1やPYY(満腹ホルモン)の低下、逆に空腹ホルモンであるグレリンの上昇が同時に起こります。これらのホルモン変化は減量後1年以上経過しても持続することが報告されており、リバウンドが「意志の弱さ」ではなく生理学的必然であることを裏付けています。

肥満時の「レプチン抵抗性」そのものが治りにくい

視床下部の慢性炎症(Vol.7で解説)や血液脳関門でのレプチン輸送障害により、レプチンが脳まで十分に届かなくなることが抵抗性の一因とされています。この炎症性の変化は、体重を落としても短期間では完全には解消しないことが分かっています。

📚 専門的エビデンス
Sumithran P, et al. “Long-term persistence of hormonal adaptations to weight loss.” New England Journal of Medicine, 2011.
PubMedで詳しく見る

本研究は肥満被験者が減量プログラムで体重の10%減少を達成した後、レプチン・グレリン・GLP-1・PYY・インスリンなど食欲関連ホルモンの変化を1年間追跡した重要な論文です。これらのホルモン変化のほとんどが1年後も元に戻らず持続していたことを示し、リバウンドが単なる意志の問題ではなく、長期的な生理学的適応であることを裏付けています。


3. LiAiL式「レプチン抵抗性に打ち勝つ5つの介入」

  1. 急激な減量を避け、緩やかなペースで落とす:体重の1〜0.5%/週程度の緩やかな減量は、レプチン急落幅を抑え、適応的熱産生を軽減することが示唆されています。極端な断食・過度な糖質制限は逆効果になりやすいため注意が必要です。
  2. 筋力トレーニングで除脂肪体重を守る:減量中に筋肉量が落ちると基礎代謝がさらに低下し、リバウンドのリスクが高まります。Vol.9で解説したマイオカインの分泌を維持する意味でも、減量期こそレジスタンストレーニングの優先度を上げるべきです。
  3. 睡眠の質を最優先する:Vol.4で解説した通り、睡眠不足はレプチン低下・グレリン上昇の両方を引き起こし、食欲亢進を加速させます。減量期こそ睡眠管理が結果を左右します。
  4. オメガ3脂肪酸を意識的に摂取する:青魚由来のEPA・DHAには抗炎症作用があり、視床下部の慢性炎症を軽減することでレプチン感受性の改善に寄与する可能性が報告されています。週2〜3回の青魚摂取が目安です。
  5. 体重維持期間を意図的に設ける:減量を一直線に続けるのではなく、数週間ごとに摂取カロリーを維持水準に戻す「ダイエットブレイク」を挟むことで、ホルモン適応の蓄積を抑える戦略が研究でも支持されています。

※摂食障害の既往がある方、持病により食事制限に医学的な配慮が必要な方は、自己判断せず必ず医師・専門家にご相談ください。


まとめ:リバウンドは「意志の弱さ」ではなく「脳が引き起こす生理反応」である

木曜連載、代謝ホルモンネットワーク編の流れを振り返ります。

  • Vol.8:腸内細菌叢がホルモン産生を左右する
  • Vol.9:マイオカインが脂肪・脳・骨密度を変える
  • Vol.10:GLP-1が食欲・血糖・体重を制御する
  • Vol.11:レプチン抵抗性がリバウンドを引き起こす

次週Vol.12では、「甲状腺ホルモンと基礎代謝——なぜ同じカロリーでも痩せ方が違うのか」を解説します。レプチン低下が引き金となる適応的熱産生の「実行部隊」である甲状腺ホルモンに焦点を当てた、代謝の司令塔シリーズ完結編です。


✒️ 執筆者プロフィール

乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表

米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムースとウメを娘のように愛する、誠実な伴走者。

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LiAiL 運営会議:本日のまとめ

リバウンドって「意志が弱いから」じゃなくて、脳が本気で「元に戻せ」って命令してたんだね……お客さんに伝えたら、きっと気が楽になる🐾

つまり「一気に痩せて一気に戻る」より「ゆっくり痩せてキープする」方が結局は近道ってことか。オレも一気食いはやめとくぞ🐾

小太郎、いいこと言うじゃない。来週Vol.12は「甲状腺ホルモンと基礎代謝——なぜ同じカロリーでも痩せ方が違うのか」——代謝の司令塔シリーズ完結編よ。🐾


川越パーソナルジムLiAiL代表乳井雅和

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