【土曜連載18】強く・美しく・動ける体を作る科学|サプリメントの科学|LiAiL
パパ、ジムに行くとみんな色んなサプリを飲んでるけど、正直どれが本当に効果あるのか分からないんだよね。クレアチン、カフェイン、BCAA……全部飲んだ方がいいの?🐾
それは大きな誤解よ。サプリメントは「エビデンスの強さ」に大きな差があって、中には研究で期待ほどの効果が示されていないものもあるの。パパ、それぞれの科学的根拠を語りなさい。🐾
皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
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13年間の製薬・医療機器業界での経験から、「エビデンスの質」を見極めることの重要性を痛感しています。サプリメント市場には魅力的な謳い文句が溢れていますが、研究の裏付けの強さは成分ごとに全く異なります。参考までに、私はクレアチンしか飲んでいません。
今回のVol.18では、ボディビルやパワーリフティングの重量を伸ばすトレーニングをしている多くの人が実際に使用しているクレアチン・カフェイン・BCAAという代表的な3つのサプリメントについて、それぞれの研究の質と効果の大きさを科学的に整理します。
(👉 【土曜連載Vol.17】筋肉痛(DOMS)の正体はこちら)
(👉 【土曜連載Vol.11】ピーキングとテーパリングの科学はこちら)
(👉 【土曜連載Vol.9】ピリオダイゼーション(期分け)の科学はこちら)
「飲めば効く」ではなく、「どのサプリが、どの程度の根拠を持っているか」を知ることが、正しい投資判断につながります。
1. サプリメントを「効果の確からしさ」で仕分ける
サプリメント市場には無数の商品がありますが、その効果を裏付ける研究の量・質は成分によって大きく異なります。「昔からある地味な成分ほど実は研究の蓄積が厚く、新しく派手な成分ほど根拠が薄い」というのは、サプリメント業界でよくあるパターンです。
2. クレアチン——最も研究され尽くしたエルゴジェニックエイド
国際スポーツ栄養学会(ISSN)は、クレアチンモノハイドレートを「現時点で最も効果が実証されたエルゴジェニックサプリメント」と位置づけています。50歳未満の成人を対象としたメタ分析(International Journal of Environmental Research and Public Health 掲載研究)では、クレアチン+レジスタンストレーニング群は、プラセボ群に比べて上半身筋力が平均4.43kg(p<0.001)、下半身筋力が平均11.35kg(p<0.001)多く向上したことが示されました。なお同研究では、男性の方が女性より効果が大きい傾向も報告されています。
興味深いことに、クレアチンにはVol.17で解説した筋肉痛(DOMS)マーカーを軽減する作用が単回の激しい運動後には見られる一方、数週間の継続摂取下では逆に筋損傷マーカーがやや高くなるという「パラドックス」も報告されています。これはクレアチンが扱える重量・容量を増やし、結果的にトレーニング強度自体が上がることが背景にあると考えられています。
📚 専門的エビデンス
Effects of Creatine Supplementation and Resistance Training on Muscle Strength Gains in Adults <50 Years of Age: A Systematic Review and Meta-Analysis. International Journal of Environmental Research and Public Health, 2024.
PubMedで詳しく見る
本メタ分析は、クレアチン+レジスタンストレーニングによる上半身・下半身の筋力向上量を定量的に示した近年の代表的な研究です。「効果があるかないか」ではなく「何kg分の差があるか」まで示している点で、実践的な意思決定に直結するエビデンスです。
3. カフェイン——用量依存的なパフォーマンス向上
カフェインはアデノシン受容体を阻害することで、疲労感の知覚を抑え、筋出力を高めることが知られています。Grgic J, et al. のメタ分析では、体重1kgあたり5〜6mgのカフェイン摂取で、限界までの反復回数(筋持久力)が平均14%増加したことが報告されています。多くの研究で推奨される用量は体重1kgあたり3〜6mg、運動の30〜60分前に摂取する形です。ただし習慣的に高用量のカフェインを摂取している人ほど効果が小さくなる傾向があるため、普段の摂取量にも注意が必要です。
4. BCAA——期待されるほどの効果はない
Jackman SR, et al.(Frontiers in Physiology, 2017)の研究では、BCAA(分岐鎖アミノ酸)のみを摂取した場合、レジスタンス運動後の筋タンパク合成率がプラセボと比較して22%向上したことが示されました。しかしこの上昇幅は、同程度のBCAAを含む20gのホエイプロテイン(+37%)と比較すると約50%小さいことも同時に報告されています。
これはBCAAだけでは筋肉づくりに必要な必須アミノ酸9種類のうち3種類しか摂取できないためで、すでに十分なタンパク質(体重1kgあたり1.6〜2.2g)を食事から摂れている人にとって、BCAA単体の追加効果は限定的であるというのが現時点での科学的な結論です。
LiAiL式「サプリメントを賢く選ぶ5つの科学的介入」

- まずは食事(タンパク質・カロリー)を整える:サプリメントはあくまで「補助」です。土台となる食事が不十分な状態でサプリだけに頼っても効果は限定的です。
- クレアチンは毎日3〜5g、継続摂取する:ローディング(初期大量摂取)をしなくても、毎日一定量を継続することで数週間かけて筋内貯蔵量が高まります。
- カフェインはVol.11のピーキング期に戦略的に使う:普段から高頻度で摂取していると効果が薄れるため、大会や重要なトレーニング日に限定して使うと効果を実感しやすくなります。
- BCAAより優先度が高いものにお金をかける:予算が限られる場合、BCAA単体よりもホエイプロテインやクレアチンの方が投資対効果は高い傾向にあります。
- 「新しい成分」ほど懐疑的に見る:研究の蓄積が少ない新成分は、効果の再現性が確認されるまで慎重に判断することをお勧めします。
※持病がある方、妊娠中・授乳中の方、他の薬を服用中の方は、サプリメント摂取前に必ず医師に相談してください。カフェインの過剰摂取は動悸・不眠等のリスクがあります。
まとめ:サプリメントは「食事の代わり」ではなく「食事の後の微調整」である
土曜連載Vol.1〜18の流れを振り返ります。
- Vol.1:神経系が重量を支配する
- Vol.2:セット数・レップ数が筋肥大を決める
- Vol.3:下ろす動作(エキセントリック)が筋肉を育てる
- Vol.4:メカニカルテンションと代謝ストレスが相乗する
- Vol.5:漸進性過負荷が成長の絶対条件
- Vol.6:レップ帯ごとに効果が異なる
- Vol.7:インターバルが筋力・筋肥大を左右する
- Vol.8:頻度が回復と成長のバランスを決める
- Vol.9:期分けが全ての要素を年間設計にまとめる
- Vol.10:オートレギュレーションが設計図を現場で機能させる
- Vol.11:ピーキングとテーパリングが疲労を記録に変換する
- Vol.12:リカバリー手段は目的に応じて選ぶべきもの
- Vol.13:ストレッチはタイミングで味方にも敵にもなる
- Vol.14:呼吸が脊柱を支える天然のベルトになる
- Vol.15:止まる場所には生体力学的な理由がある
- Vol.16:可変抵抗で弱点を狙い撃つことができる
- Vol.17:筋肉痛は成長の証明ではなく回復のサイン
- Vol.18:サプリメントは成分ごとに根拠の強さが全く違う
次週Vol.19では、「プロテイン摂取のタイミングとアナボリックウィンドウの科学——『30分以内』は本当か」を解説します。サプリメントの次は、多くの人が気にする「タイミング」という切り口です。
✒️ 執筆者プロフィール
乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表
米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムースとウメを娘のように愛する、誠実な伴走者。
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LiAiL 運営会議:本日のまとめ
BCAAが「効果がある」けど「ホエイの半分」っていうのは意外だった!飲まないよりはマシだけど、優先順位を知るのは大事だね🐾
オレも散歩前にコーヒーの匂いを嗅ぐと元気が出る気がするんだが、あれもカフェインの効果か?🐾
小太郎、それはただの気のせいよ。来週Vol.19は「プロテイン摂取のタイミングとアナボリックウィンドウの科学」——「30分以内」神話の真偽を解説するわ。🐾










