【日曜連載12】解剖・神経・筋膜レクチャー|膝関節のスクリューホームムーブメント—ロッキングメカニズムの真実|LiAiL

2026.08.02

パパ、スクワットで膝を完全に伸ばしきる瞬間に「クッ」ってひねれる感覚があるって選手が言ってたんだけど、あれって何?🐾

それは「スクリューホームムーブメント」——膝が伸びきる瞬間に起こる正常なロッキング機構よ。パパ、そのメカニズムを語りなさい。🐾

皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
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パワーリフティングのスクワットでロックアウトする瞬間、膝には単純な「伸展」だけでなく「回旋」が同時に起きています。この現象を知らずに指導すると、ロックアウト時の違和感を誤って「怪我の予兆」と判断してしまうことがあります。

Vol.11では股関節の深層外旋六筋を解説しました。今週Vol.12は、その股関節の回旋と連動する「膝関節のスクリューホームムーブメント——ロッキングメカニズムの真実」を解説します。

(👉 【日曜連載Vol.11】深層外旋六筋の解剖学はこちら
(👉 【日曜連載Vol.6】OKC・CKCの力学的連鎖はこちら


1. スクリューホームムーブメントとは何か——なぜ膝は「ロック」されるのか

大腿骨の内側顆(内側の膝の丸み)は、外側顆に比べて前後方向に長く、かつ形状が異なります。膝が完全伸展に近づく過程で、先に外側顆の関節面が「使い切られ」、残った内側顆の上を脛骨が滑り続けることで、脛骨が大腿骨に対して外旋する——これが「スクリューホームムーブメント(ねじ込み運動)」です。

この回旋によって前十字靭帯(ACL)・後十字靭帯(PCL)・側副靭帯が同時に緊張し、膝関節は追加の筋力なしに安定した「ロック」状態に入ります。立位保持の際に大腿四頭筋を使い続けなくて済むのは、このロッキング機構のおかげです。

📚 専門的エビデンス
Hallén LG, Lindahl O. “The ‘screw-home’ movement in the knee-joint.” Acta Orthopaedica Scandinavica, 1966.
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スクリューホームムーブメントを世界で初めて定量的に測定した古典的研究です。膝関節を屈曲160度から完全伸展0度まで動かした際、脛骨は平均7〜12度、外旋することが確認されました。一方で被験者は意識的に脛骨を内旋・外旋どちらの方向にも操作できることも示されており、この回旋が完全に受動的(骨形状だけによるもの)ではなく、筋・靭帯によっても調整可能であることを示唆しています。


2. OKCとCKCで現れ方が違う——「どちらの骨が回るか」の力学的差

木曜Vol.6で解説した開放性運動連鎖(OKC)と閉鎖性運動連鎖(CKC)の違いは、スクリューホームムーブメントの現れ方にもそのまま反映されます。

OKC(レッグエクステンション等):脛骨が動く

足が床から離れ、脛骨が自由に動ける状況では、大腿骨に対して脛骨側が外旋します。

CKC(スクワット等):大腿骨が動く

足が床に固定され脛骨が動けない状況では、逆に大腿骨側が脛骨に対して内旋することで、相対的に同じロッキングが起こります。この大腿骨の内旋を制御するのが、Vol.11で解説した股関節の深層外旋六筋・大臀筋です。CKC種目でロックアウト時の膝の違和感を訴えるクライアントには、膝そのものより股関節の回旋コントロールを先に評価する必要があります。


3. 膝窩筋(popliteus)——ロックを解除する「鍵開け筋」

完全伸展位からのロックは、動き出す前に必ず解除されなければなりません。この「鍵開け」の役割を担うのが、膝窩の奥深くにある小さな筋——膝窩筋(popliteus)です。膝窩筋は屈曲運動が始まる最初期に働き、OKCでは脛骨を内旋させ、CKCでは大腿骨を外旋させることで、スクリューホームによるロックを解除し、その後の屈曲運動を可能にします。

膝窩筋の機能不全は、しゃがみ込み動作の初動で膝が「引っかかる」ような違和感として現れることがあり、単なる大腿四頭筋の柔軟性不足と混同されやすい部位です。


4. LiAiL式「スクリューホームムーブメントを活かす5つの臨床的介入」

  1. ロックアウト時の回旋を無理に止めない:スクワット・デッドリフトの完全伸展位で膝がわずかに外旋(あるいは大腿骨がわずかに内旋)するのは正常な生理的現象であり、フォームの誤りと誤診しない。
  2. CKC種目では股関節の回旋コントロールを先に確認する:ロックアウト時の膝の違和感を訴えるクライアントには、Vol.11の深層外旋六筋・大臀筋の機能から評価する。
  3. しゃがみ込み初動の引っかかりを見逃さない:屈曲開始直後の詰まり感・引っかかり感は、膝窩筋によるロック解除の機能不全を疑う所見として扱う。
  4. 左右差を必ず比較する:スクリューホームの回旋量には個人差・左右差があるため、単一の正常値と比較せず、本人の反対側の膝を基準にする。
  5. ロッキング消失は放置しない:本来あるべき回旋ロックが消失している場合、半月板損傷など構造的な問題が隠れている可能性がある。腫れ・引っかかり・可動域制限を伴う場合は自己判断せず整形外科での評価を優先する。

まとめ:膝の「ねじれ」は異常ではなく、省エネのための正常な設計である

日曜シリーズこれまでの流れを振り返ります。

  • Vol.1:腸腰筋の解剖学的真実
  • Vol.2:運動単位の動員順序と神経支配比
  • Vol.3:筋膜(ファシア)学の臨床応用
  • Vol.4:大臀筋の筋束走行と最大収縮角度
  • Vol.5:筋膜連鎖という全身ネットワーク
  • Vol.6:OKC・CKCの力学的連鎖
  • Vol.7:関節モビリティとスタビリティの配列
  • Vol.8:固有受容感覚とバランス能力
  • Vol.9:脊柱の生理的弯曲と衝撃吸収の力学
  • Vol.10:胸郭の解剖学と呼吸メカニクス
  • Vol.11:深層外旋六筋の解剖学
  • Vol.12:膝関節のスクリューホームムーブメント

次週Vol.13では、股関節・膝関節から下降し「足関節の解剖学——距骨下関節とプロネーション・スピネーションの力学」を予定しています(テーマは次回確定します)。


✒️ 執筆者プロフィール

乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表

米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムースとウメを娘のように愛する、誠実な伴走者。

(👉 代表・乳井の詳しいプロフィールはこちら


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LiAiL 運営会議:本日のまとめ

膝がねじれるのは壊れてるからじゃなくて、省エネのための設計だったなんて!ロックアウトの違和感、もう怖くないね!🐾

オレの膝にも「鍵開け筋」があるのか⁉︎ 走り出す時のあの一瞬の”ため”がそれかもな。パパ、次回の足首の話も期待してるぞ🐾

小太郎、それは単に準備運動しているだけよ。来週Vol.13は「足関節の解剖学とプロネーション・スピネーション」——足首から続く力の連鎖を解説するわ。🐾


川越パーソナルジムLiAiL代表乳井雅和

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