【木曜連載13】最新論文から読み解く美と健康|セロトニンとドーパミン。やる気と食欲を操る脳内物質の科学|LiAiL

2026.08.06

パパ、やる気が出ない日ってあるし、ストレスが溜まると甘いものが無性に食べたくなる日もあるよね……これってホルモンの話じゃなくて、脳の中の何かが関係してるの?🐾

それはホルモンではなく、脳の中の「神経伝達物質」の働きよ、ムース。ここからは新シリーズ、脳内物質編の始まり。パパ、20,000セッション以上の指導の中で見てきた「モチベーションが続く人」と「食欲に振り回される人」の違いを、この視点から語りなさい。🐾

皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
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Vol.5〜Vol.12では、テストステロン・IGF-1・マイオカイン・GLP-1・レプチン・甲状腺ホルモンという「代謝ホルモンネットワーク」を追ってきました。今回Vol.13からは新シリーズ、脳内物質編がスタートです。第一弾は「セロトニンとドーパミン。やる気と食欲を操る脳内物質の科学」を解説します。

(👉 【火曜連載Vol.3】プロゲステロンと食欲の暴走はこちら
(👉 【木曜連載Vol.4】睡眠と成長ホルモンはこちら
(👉 【木曜連載Vol.9】マイオカインが脂肪・脳・骨密度を変える分子生物学はこちら
(👉 【木曜連載Vol.12】甲状腺ホルモンと基礎代謝はこちら

「意志が弱いから続かない」「ストレスで甘いものに手が伸びる」これらは性格の問題ではありません。セロトニンとドーパミンという2つの脳内物質のバランスが、モチベーションと食欲の両方を科学的に左右しています。


1. セロトニンとドーパミンとは何か「満足」と「欲求」を分担する2つの物質

セロトニンは必須アミノ酸であるトリプトファンから合成される神経伝達物質で、精神の安定・満腹感・衝動のブレーキ役を担います。興味深いことに、体内のセロトニンの約90%は脳ではなく腸に存在しており、消化管の働きにも深く関与しています。

一方ドーパミンは「報酬系」と呼ばれる脳内回路の中心物質で、目標達成の「快感」そのものよりも、目標に向かう「意欲・欲求」を生み出す役割を担っています。何かを達成した瞬間ではなく、達成に向かって行動している最中にこそ強く分泌されるのが特徴です。

セロトニンが「ブレーキ」、ドーパミンが「アクセル」この2つのバランスが崩れると、モチベーション低下と衝動的な食欲の両方が同時に起こりやすくなります。


2. 脳内物質が「やる気」と「食欲」を操る4つのメカニズム

セロトニン低下が「炭水化物への渇望」を引き起こす

脳内セロトニンが低下すると、脳は無意識に「セロトニンを増やす行動」を求めます。糖質摂取はインスリン分泌を通じて、トリプトファンと競合する他のアミノ酸(分岐鎖アミノ酸など)の血中濃度を下げ、結果的に脳へのトリプトファン取り込みを増やします。「ストレスで甘いものが欲しくなる」現象の一部は、この脳の自己防衛的なセロトニン確保行動として説明されます。火曜Vol.3で解説したプロゲステロン変動による食欲暴走とも重なる部分です。

ドーパミンは「達成した瞬間」より「達成に向かう過程」で分泌される

ドーパミンは報酬を得た瞬間よりも、報酬を「期待」している間に強く分泌されることが分かっています。トレーニングの成果が出るまで数週間かかる中でモチベーションが続かなくなるのは、この「期待に対する分泌」が途切れることが一因です。小さな達成目標を細かく設定することが、ドーパミン分泌を途切れさせないための鍵になります。

高糖質・高脂質食品はドーパミン報酬系を過剰刺激する

精製された糖質と脂質を組み合わせた超加工食品は、自然の食品よりも強くドーパミン報酬系を刺激することが報告されています。この刺激が繰り返されると、通常の食事や日常の達成では満足感を得にくくなる「報酬系の鈍化」が起こりうることが指摘されています。

運動がセロトニン・ドーパミン双方の合成を促進する

有酸素運動・筋力トレーニングともに、急性的にセロトニン・ドーパミンの分泌を高めることが示されています。Vol.9で解説したマイオカインの一部は血液脳関門を通過し、脳内のセロトニン・ドーパミン合成系にも影響を与えることが近年の研究で示唆されています。運動は「気分転換」以上の、明確な神経化学的効果を持つ介入です。

📚 専門的エビデンス
Young SN. “How to increase serotonin in the human brain without drugs.” Journal of Psychiatry & Neuroscience, 2007.
PubMedで詳しく見る

本総説は、トリプトファンの脳内取り込みが他の血中アミノ酸との競合関係にあること、そして糖質摂取がインスリン分泌を介してこの競合を緩和し脳内セロトニン合成を促進する経路を整理した代表的な論文です。薬に頼らずセロトニンレベルに影響を与えられる生活習慣(食事・運動・光曝露)の科学的根拠として、本記事のLiAiL式介入の土台となっています。


3. LiAiL式「セロトニン・ドーパミンを整える5つの介入」

  1. 有酸素運動を定期的に行う:週3回以上、20〜30分の有酸素運動はセロトニン・ドーパミン双方の合成を促進します。Vol.9のマイオカインとも連動し、運動は最も再現性の高い脳内物質の介入です。
  2. 朝の光を浴びる:セロトニン合成には光刺激が関与しており、起床後30分以内に日光を浴びる習慣がセロトニン分泌のリズムを整えます。Vol.4で解説した睡眠ホルモン(メラトニン)はこのセロトニンから夜間に合成されるため、朝の光曝露は睡眠の質にも波及します。
  3. 達成可能な小さな目標を積み重ねる:大きな目標を細分化し、「今日できた」という小さな達成を意図的に作ることがドーパミン分泌を途切れさせない鍵です。トレーニング記録をつけ、小さな進歩を可視化することが有効です。
  4. 超加工食品・精製糖の頻度を見直す:高糖質・高脂質の組み合わせ食品を減らし、未加工の食品を中心にすることで、報酬系の過剰な刺激と鈍化のサイクルを避けやすくなります。完全に排除するのではなく、頻度と量を見直すことが現実的です。
  5. タンパク質と適量の糖質をバランス良く摂る:トリプトファンを含むタンパク質源(乳製品・大豆製品・卵など)と適量の糖質を組み合わせることで、脳内へのトリプトファン取り込みを効率化できます。極端な糖質制限はセロトニン合成にとって不利に働く可能性があります。

まとめ:モチベーションと食欲は「性格」ではなく「脳内物質のバランス」で決まる

木曜連載、脳内物質編Vol.13の内容を振り返ります。

  • セロトニン:満腹感・衝動のブレーキを担う「安定」の物質
  • ドーパミン:達成に向かう過程で分泌される「意欲」の物質
  • 共通の介入:運動・光曝露・小さな達成・食事バランスが両方を整える

次週Vol.14では、「オキシトシンとコミュニケーション|信頼と絆が体組成にまで影響する科学」を解説します。脳内物質編第二弾として、対人関係とストレス耐性、そして体組成の意外なつながりに迫ります。


✒️ 執筆者プロフィール

乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表

米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムースとウメを娘のように愛する、誠実な伴走者。

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LiAiL 運営会議:本日のまとめ

甘いものが欲しくなるのって、脳が「セロトニンをちょうだい」って言ってたんだね……次からは我慢するより、朝日を浴びて運動する方が近道かも🐾

オレは散歩のたびにドーパミンが出てるってことか。道理で毎日楽しいわけだ🐾

小太郎、その調子よ。来週Vol.14は「オキシトシンとコミュニケーション。信頼と絆が体組成にまで影響する科学」脳内物質編第二弾よ。🐾


川越パーソナルジムLiAiL代表乳井雅和

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