【木曜連載12】最新論文から読み解く美と健康|甲状腺ホルモンと基礎代謝。なぜ同じカロリーでも痩せ方が違うのか|LiAiL
パパ、同じ食事量・同じ運動量なのに、痩せやすい人と痩せにくい人がいるのはなぜ?「代謝が違う」ってよく聞くけど、その正体は何なの?🐾
その「代謝」の実行部隊が甲状腺ホルモンよ、ムース。Vol.11で解説したレプチン低下の信号は、最終的にこの甲状腺ホルモンを介して基礎代謝を落とすの。パパ、13年の製薬業界経験と数百件の手術立ち合いで見てきた甲状腺の重要性を語りなさい。🐾
皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
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Vol.11ではレプチン抵抗性が「なぜリバウンドするのか」を解説しました。今回Vol.12は、そのレプチン低下シグナルの「実行部隊」であり、代謝ホルモンネットワーク編の完結編「甲状腺ホルモンと基礎代謝。なぜ同じカロリーでも痩せ方が違うのか」を解説します。
(👉 【木曜連載Vol.2】コルチゾールとインスリン抵抗性はこちら)
(👉 【木曜連載Vol.6】IGF-1—筋肥大・脂肪分解・抗老化の鍵を握る第三の同化因子はこちら)
(👉 【木曜連載Vol.9】マイオカインが脂肪・脳・骨密度を変える分子生物学はこちら)
(👉 【木曜連載Vol.11】レプチン抵抗性。なぜ痩せてもリバウンドするのかはこちら)
「代謝が低い体質だから仕方ない」これは半分正解で半分誤解です。甲状腺ホルモンの働きは体質だけで固定されているわけではなく、食事内容や減量ペースによって日々変動する「調整可能な代謝スイッチ」でもあります。
1. 甲状腺ホルモンとは何か。全身の細胞に「代謝せよ」と命じるホルモン
甲状腺ホルモンには主にT4(サイロキシン)とT3(トリヨードサイロニン)の2種類があります。甲状腺から分泌されるホルモンの大部分はT4ですが、実際に細胞の代謝を活性化させる「活性型」はT3です。肝臓・腎臓・筋肉などの末梢組織で、脱ヨウ素酵素によりT4からT3への変換が行われています。
この分泌システムは、脳の視床下部が出すTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)→下垂体のTSH(甲状腺刺激ホルモン)→甲状腺からのT4・T3分泌、という「視床下部-下垂体-甲状腺軸(HPT軸)」によって精密に制御されています。
全身のほぼ全ての細胞にT3受容体が存在し、細胞内のミトコンドリアでのエネルギー産生(基礎代謝)の速度そのものを決定づけています。体温・心拍数・消化速度・脂肪分解速度まで、この一つのホルモン系が統括しているのです。
2. なぜ減量中に「代謝が落ちた」と感じるのか。4つのメカニズム
① レプチン低下がTRH分泌を減少させる
Vol.11で解説した通り、減量によりレプチンが低下すると、視床下部はエネルギー危機と判断しTRHの分泌を減らします。これがHPT軸全体を下方修正させ、T3・T4分泌の低下につながる出発点です。
② T4からT3への変換効率が低下する
カロリー制限、特に極端な低カロリー・低糖質の状態が続くと、末梢組織でのT4からT3への変換が抑制されます。同時に、代謝を活性化させないT3の変異体であるリバースT3の産生が増加することも報告されています。血液検査でT4・TSHが正常でも、実質的な代謝活性が低下しているケースがあるのはこのためです。
③ 筋肉量減少による代謝基盤の縮小
Vol.9で解説したマイオカイン分泌の低下と併せ、筋肉量そのものが減ることで、T3が働きかける「代謝の土台」自体が小さくなります。甲状腺ホルモンがいくら十分でも、作用する筋肉量が少なければ消費カロリーは伸びません。
④ 慢性的な高コルチゾールがHPT軸を抑制する
Vol.2で解説したコルチゾールの慢性的な上昇は、TRH・TSHの分泌を抑制し、T4からT3への変換も阻害することが知られています。過度なストレス下での減量が「頑張っているのに痩せない」状態を招く生理学的理由の一つです。
📚 専門的エビデンス
Rosenbaum M, Leibel RL. “Adaptive thermogenesis in humans.” International Journal of Obesity, 2010.
PubMedで詳しく見る
本研究は体重減少後に生じる甲状腺ホルモン(T3)・交感神経活動・筋肉のエネルギー効率の変化が、単純な体組成の変化だけでは説明できない規模の代謝低下(適応的熱産生)を引き起こすことを示した代表的な総説です。レプチン低下がHPT軸を介して代謝を抑制する経路が整理されており、Vol.11のレプチン抵抗性と本記事の甲状腺機能低下が同一の生理学的連鎖にあることを裏付けています。
3. LiAiL式「甲状腺機能を守りながら痩せる5つの介入」
- 極端なカロリー制限を避ける:過度な低カロリー状態はT3低下・リバースT3増加を招きます。減量期でも消費カロリーの70〜80%程度を目安に、極端な制限を避けることが甲状腺機能の維持につながります。
- ヨウ素・セレン・亜鉛を確保する:ヨウ素は甲状腺ホルモン合成の材料そのもの、セレンと亜鉛はT4からT3への変換酵素の働きを支えます。海藻類・魚介類・卵・ナッツ類を日常的に取り入れることが有効です。
- タンパク質と適量の糖質を確保する:極端な糖質制限はT3低下と直結しやすいことが報告されています。除脂肪体重1kgあたり1.6〜2.2gのタンパク質に加え、活動量に応じた適量の糖質確保が代謝維持に重要です。
- 筋力トレーニングで代謝の土台を維持する:Vol.9・Vol.11で解説した通り、筋肉量の維持はT3が作用する代謝基盤そのものを守ります。減量期こそレジスタンストレーニングの頻度を落とさないことが結果を左右します。
- 慢性ストレスとコルチゾールを管理する:Vol.2で解説したコルチゾール管理(睡眠確保・過度な有酸素運動の回避・リラクゼーション時間の確保)がHPT軸の正常な働きを支えます。甲状腺の数値に異常を感じる場合は自己判断せず、内科・内分泌科での血液検査をお勧めします。

※甲状腺機能低下症・亢進症などの既往がある方、健康診断で甲状腺の数値異常を指摘されたことがある方は、自己判断せず必ず医師にご相談ください。
まとめ:基礎代謝は「固定された体質」ではなく「日々調整可能なホルモンシステム」である
木曜連載、代謝ホルモンネットワーク編(Vol.5〜Vol.12)を振り返ります。
- Vol.9:マイオカインが脂肪・脳・骨密度を変える
- Vol.10:GLP-1が食欲・血糖・体重を制御する
- Vol.11:レプチン抵抗性がリバウンドを引き起こす
- Vol.12:甲状腺ホルモンが基礎代謝の実行部隊を担う
次週Vol.13からは新シリーズとして、脳内物質にフォーカスした「セロトニンとドーパミン。やる気と食欲を操る脳内物質の科学」を解説します。ホルモンだけでなく神経伝達物質の視点から、モチベーションと食行動の関係に迫ります。
✒️ 執筆者プロフィール
乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表
米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムースとウメを娘のように愛する、誠実な伴走者。
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LiAiL 運営会議:本日のまとめ
Vol.9からVol.12まで、マイオカイン→GLP-1→レプチン→甲状腺って、体の中で全部つながってたんだね!代謝って一つのホルモンだけの話じゃないんだ🐾
要するに「代謝が低い」で片付けずに、ストレスと栄養と筋トレを整えろってことだな。オレも昼寝ばっかりしてないでちゃんと歩くぞ🐾
小太郎、いい心がけね。来週Vol.13からは新シリーズ「セロトニンとドーパミン。やる気と食欲を操る脳内物質の科学」脳内物質編の始まりよ。🐾











