【金曜連載11】男女ダイエット・競技者減量の科学|計量前48時間の科学|パフォーマンスを落とさない安全な最終調整|LiAiL
パパ、大会前に「サウナスーツで汗かいて一気に体重落とす」ってやってる人がいたけど、あれって普通にアリなの?🐾
それは研究者たちが「禁止すべき」と警告している方法よ。パパはパワーリフティング競技者として計量を何度も経験してきたはず。安全な方法と危険な方法の違いを、きちんと科学的に語りなさい。🐾
皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
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私自身、パワーリフティング競技者として複数回の大会で計量を経験してきました。今週Vol.11は、金曜Vol.2で扱った「競技者の計画的減量」の延長線上にある——「計量前48時間の科学:パフォーマンスを落とさない安全な最終調整」を解説します。
(👉 【金曜連載Vol.2】競技者の計画的減量はこちら)
(👉 【金曜連載Vol.10】体重計の数字の科学はこちら)
(👉 【金曜連載Vol.5】PFCマクロ設計はこちら)
最初にお伝えしておきたいのは、本記事は階級制競技(パワーリフティング・柔道・レスリング・ボクシング等)で日常的に指導者の管理下にある経験者を対象とした内容であり、一般のダイエットや自己流での実践を推奨するものではないという点です。スポーツ栄養学の研究者らは、サウナスーツや利尿剤、極端な水分制限による「危険な減量」を明確に問題視しており、Artioliら(2016年)は“格闘技における急速減量を今すぐ禁止すべき”と提言しています。安全な方法と危険な方法には明確な線引きがあります。
1. 「計量前の水抜き」——本当の問題は「量」ではなく「方法」
① なぜ「方法」によって安全性がまったく違うのか
Reale R, Slater G, Burke LM(2017年)が実施した格闘技系競技のレビューでは、グリコーゲン・ナトリウム・水分の戦略的な操作によって、パフォーマンスへの悪影響を最小限に抑えながら計量をクリアできることが示されています。一方で、サウナスーツによる急速な発汗や利尿剤の使用は、同じ「体重を落とす」という結果でも生理学的な負荷がまったく異なります。「何kg落とすか」ではなく「どうやって落とすか」が安全性を決める、というのが本記事の核心です。
② 上限は「体重の3〜5%以内」——これを超えると健康リスクが跳ね上がる
複数のスポーツ栄養学のレビューが一致して指摘しているのは、急速な体重減少が体重の5%を超えると、心血管系・内分泌系への深刻な健康リスクが高まるという点です。金曜Vol.10で解説した通り、体重変動の多くはグリコーゲンと結合した水分によるものであり、体重の3〜5%程度までは、この水分プールの操作で対応可能な範囲とされています。逆に言えば、それ以上のカットを狙う階級選択自体が、そもそも無理のある設計だということです。
📚 専門的エビデンス
Reale R, Slater G, Burke LM. “Acute-Weight-Loss Strategies for Combat Sports and Applications to Olympic Success.” International Journal of Sports Physiology and Performance, 2017;12(2):142-151.
PubMedで詳しく見る
オリンピック格闘技競技を対象に、計量前の急速減量戦略とパフォーマンスへの影響を整理したレビューです。炭水化物・ナトリウム・水分の摂取を計画的に調整することで、危険な脱水手法に頼らずに計量をクリアできることを示しており、本記事で紹介する「安全な最終調整」の科学的根拠となっています。
2. グリコーゲン・ナトリウム・水分の戦略的操作——「脱水」との違い
金曜Vol.10で解説した通り、糖質1gには水分約3gが結合しています。つまり計量前数日で炭水化物摂取を段階的に減らせば、体内の水分プールそのものが縮小し、脱水を伴わずに体重が落ちることになります。同様に、ナトリウム摂取を緩やかに減らすことで、体が保持する水分量も調整できます。これは金曜Vol.5で解説したPFC設計の応用であり、「水を飲まない」のではなく「体が溜め込む水分の量を減らす」という発想の違いが重要です。
女性競技者の場合、月経周期による水分保持の変動(火曜連載で解説)も考慮に入れる必要があり、計量日が黄体期と重なるかどうかで最終調整の幅は変わります。
3. LiAiL式「計量前48時間 安全な最終調整 5つの原則」
- カット幅は事前に「体重の3〜5%以内」で逆算する:計量当日にその場で決めるのではなく、数週間前の段階で無理のない階級を選び、上限を超えない計画を立てます。
- 炭水化物は計量4〜5日前から段階的に調整する:急激な変更ではなく、金曜Vol.5のPFC設計の枠内で徐々に減らし、グリコーゲンと結合した水分を穏やかに減らします。
- ナトリウムの調整も計量2〜3日前から緩やかに:直前の急な変更は体調不良のリスクを高めるため、複数日かけて段階的に行います。
- 水分摂取を計量前日まで極端に制限しない:直前の断水はパフォーマンス低下と健康リスクの両方を高めます。水分よりも炭水化物・ナトリウムの調整を優先します。
- 計量後のリハイドレーション計画を必ず立てる:計量から試合開始までの時間で、電解質と炭水化物を計画的に再補給し、パフォーマンスを試合当日に合わせて回復させます。

※本記事は競技経験があり、日頃から指導者の管理下で減量を行っている階級制競技者を対象としています。自己流での実践、成長期の選手、持病をお持ちの方への適用は推奨しません。必ず所属チームのコーチ・スポーツドクター・管理栄養士と相談の上で計画してください。
まとめ:「何kg落とすか」ではなく「どう落とすか」——安全性がパフォーマンスを守る
金曜シリーズの流れを振り返ります。
- Vol.7:チートデイの科学——リフィードによる代謝適応への精密な対策
- Vol.8:アルコールと体組成——完全禁止ではなく戦略的な飲み方の管理
- Vol.9:外食・コンビニ食でも体組成を維持する科学——現実的な選択肢の作り方
- Vol.10:体重計の数字に振り回されない科学——停滞期のメンタルマネジメント
- Vol.11:計量前48時間の科学——パフォーマンスを落とさない安全な最終調整
次週Vol.12では、「計量後リカバリーの科学——試合開始までに最大パフォーマンスへ戻す再補給設計」を解説する予定です。Vol.11で立てた最終調整の続きとして、計量直後から試合開始までの限られた時間でコンディションを取り戻す実践的な方法を掘り下げます。
✒️ 執筆者プロフィール
乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表
米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムースとウメを娘のように愛する、誠実な伴走者。
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