【土曜連載25】強く・美しく・動ける体を作る科学|年齢とトレーニングの科学|LiAiL

2026.10.31

パパ、50代のお客さんが「もう歳だから筋肉はつかないよね」って言ってたんだけど……本当に年齢で筋トレの効果って変わっちゃうの?🐾

「歳だから無理」は、データで見るとかなり大げさなのよ。ただし、若い頃と同じやり方では合わなくなるのも事実。パパ、事実と目安をきちんと分けて話しなさい。🐾

皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
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22,000本以上のセッションの中で、50代、60代から初めてバーベルを握り、数か月で階段や立ち上がりが見違えるように楽になったお客様に数多く出会ってきました。「もう遅い」と言って始めなかった方より、「今日が一番若い」と思って始めた方のほうが、確実に先へ進んでいます。

今回のVol.25では、年齢とともに筋肉と筋力がどう変わるのか、そして何歳からでもトレーニングは有効なのかを、確認できている事実と目安を分けて整理します。

(👉 【土曜連載Vol.24】ディロードの科学はこちら)
(👉 【土曜連載Vol.5】漸進的過負荷の科学はこちら)
(👉 【土曜連載Vol.13】モビリティとストレッチングの科学はこちら)
(👉 【土曜連載Vol.22】睡眠の科学はこちら)

結論から言うと、年齢で変わるのは「効果が出るかどうか」ではなく、「回復の余裕と、守るべき安全の幅」です。


1. 年齢とともに、何がどれくらい変わるのか

① 筋肉の量は「ゆっくり」、筋力は「それより速く」落ちる

Mitchell WK, et al.(Frontiers in Physiology, 2012)の定量レビューによると、筋肉の量が減る速さは、横断研究(年代の違う人を比べた研究)の中央値で、男性が年0.47%、女性が年0.37%でした。一方、同じ人を追跡した研究では、75歳時点で男性が年0.80〜0.98%、女性が年0.64〜0.70%の減少が報告されています。これに対して筋力は、75歳時点で男性が年3〜4%、女性が年2.5〜3%と、筋肉の量が減るより2〜5倍速く低下すると整理されています。

② 「50歳から毎年1〜2%減る」は言い過ぎ

よく「50歳を過ぎると筋肉は毎年1〜2%ずつ減る」と言われますが、同レビューは、長期追跡のデータではこの数字は支持されず、多くが年1%未満だったと指摘しています。70歳を超えると、20〜30代と比べて約80%程度の筋肉量になる、という整理です。不安をあおる数字より、「ゆっくり減るが、筋力の低下のほうが生活に響きやすい」と理解するのが正確です。

③ 筋肉の「量」より「質」が問われる

同レビューでは、膝を伸ばす筋力を5年間追跡した約1,700人のデータで、男性は筋力が約16%低下したのに太ももの筋肉量は約5%の減少にとどまり、女性も筋力が約13%低下したのに筋肉量は約3%の減少でした。筋肉の量が減った分だけでは、筋力の低下を説明しきれていません。つまり、筋肉の「量」だけでなく、力を出す「質」(神経の働きなど)も年齢で変わると考えられています。だからこそ、体重や見た目だけでなく、実際に「重さを扱う練習」を続けることが重要になります。

④ 数字は「平均」であって、あなたの未来ではない

Mitchellらのレビューでも、減少の速さは研究や個人によって大きく幅があります。同じ70代でも、運動習慣や生活環境によって、筋力の水準は大きく異なります。ここで示した数字は「何もしなければこの程度の速さで進む可能性がある」という目安であり、トレーニングで流れを緩やかにできる余地があることは、先ほどのPetersonらのデータが示す通りです(推測を含みます)。


2. 科学的根拠|何歳からでも、筋トレは効くのか

① 【研究データ】平均50歳以上でも、約20週で除脂肪量が約1.1kg増えた

Peterson MD, et al.(Medicine & Science in Sports & Exercise, 2011)のメタ分析は、平均年齢が50歳以上の集団を対象にした49件の研究(81のグループ)を統合しました。トレーニング期間は平均約20週で、除脂肪量(脂肪以外の体重)が平均で約1.1kg(2.42ポンド)増加したと報告されています。「歳だから筋肉はつかない」という考えは、この数字からは支持されません。

📚 専門的エビデンス

Peterson MD, Sen A, Gordon PM. “Influence of resistance exercise on lean body mass in aging adults: a meta-analysis.” Medicine & Science in Sports & Exercise, 2011.
PubMedで詳しく見る

Mitchell WK, et al. “Sarcopenia, Dynapenia, and the Impact of Advancing Age on Human Skeletal Muscle Size and Strength; a Quantitative Review.” Frontiers in Physiology, 2012.
論文を詳しく見る

Fragala MS, et al. “Resistance Training for Older Adults: Position Statement From the National Strength and Conditioning Association.” Journal of Strength and Conditioning Research, 2019.
論文を詳しく見る(DOI)

3本は、加齢による変化の大きさ(Mitchell)、トレーニングによる改善の大きさ(Peterson)、実践上の位置づけ(Fragala)をそれぞれ示しています。

② 【専門家の見解】NSCAは「利益がリスクを上回る」と整理

全米ストレングス&コンディショニング協会(NSCA)の高齢者向けポジションステートメント(Fragala MS, et al., 2019)は、適切に実施すれば、レジスタンストレーニングの利益はリスクを上回ると整理しています。筋力・筋量だけでなく、身体機能、移動能力、自立、生活の質の改善にも関わりうるとされ、参加が少ない理由として「怖さ」と「やり方の合意がないこと」が挙げられています。

③ この研究から「言えること」と「言えないこと」

上記の平均値1.1kgは、研究ごとの方法や対象が異なる全体の平均です。個人差があり、全員が同じだけ増えるわけではありません。また、「何歳でも同じ速さで伸びる」とは言えず、若い頃より回復に時間がかかる傾向は多くの現場で見られます(LiAiLの実感を含みます)。大切なのは、「効かない」ではなく「効き方と回復のペースが変わる」と捉えることです。


3. 年代別|何を優先して、何を守るか(LiAiLの運用目安)

以下の年代分けは、研究で決まった区分ではなく、LiAiLの指導で使っている目安です。

① 30〜40代|「貯金」を作る時期

仕事や育児で睡眠と時間が削られやすい時期です。筋肉の量と骨への刺激を「貯金」しておく意味で、週2〜3回の重い負荷での練習を続けます。ただし、睡眠不足やストレスが重なると回復が追いつかないため、Vol.22・Vol.23の考え方で総負荷を調整します。

② 50〜60代|「回復の余裕」を設計に入れる時期

この時期は、トレーニングそのものの効果は十分に出ますが、関節の違和感や疲労の抜けにくさが出始める方が増えます。重量の追い込みは控えめにして、RPE7〜8を中心に、軽い週(Vol.24)を早めに入れます。動かしやすさを保つため、Vol.13のモビリティの練習も併せて行います。

③ 70代以降|「立ち上がる・歩く」を守る時期

目的を、見た目の変化から「生活の中で必要な動作を守ること」へ移します。椅子からの立ち上がり、階段、荷物を持つ動作に近い種目を中心にし、持病や服薬がある場合は、必ず医師に確認した上で進めます。


4. 実践|負荷の決め方と伸ばし方(計算例)

① 頻度と量の目安

LiAiLでは、初めて筋トレをする50代以上の方には、週2回、全身を基本とします。1種目あたり2〜3セット、1回のセッションで5〜6種目程度とし、週あたりの合計セット数は、1つの部位につき6〜10セットを目安にしています。これは研究で一律に決まった数字ではなく、運用上の目安です。

② 重量の伸ばし方|Vol.5の考え方を、小さな刻みで

たとえば、レッグプレスを40kg×10回×3セットで、RPE7で行えているとします。3セットすべてで12回できて、RPEが7のままなら、次回は重量を2.5〜5%(40kgなら1〜2kg)上げ、回数を10回に戻す、というように進めます。40×0.05=2kgです。この小さな刻みなら、関節や腱への負担を抑えながら、無理なく上げられます。急に10%以上上げると、疲労が抜けにくく、ケガのリスクも高まります。

③ 回復を整える|休み方も「設計」する

同じ部位は、中2日以上あけます。RPEが普段より高い状態が2週間続く、睡眠が不足している、関節に違和感が出るといった場合は、Vol.24のように量を50〜60%に落とし、Vol.10のRPEで戻りを確認します。タンパク質を食事で十分に摂ることも、土台として重要です(Vol.19)。

④ やってはいけない「若い頃の感覚」

「昔はこれくらい上がった」という感覚で、いきなり高重量に挑戦するのは避けてください。まずは動作の確認とフォームを整え、重量は数週間かけて上げます。ウォームアップを丁寧に行い、息を止めすぎない呼吸(Vol.14)を心がけることも、安全面で大切です。

⑤ 「測る」ことで、続ける力が生まれる

年齢が上がるほど、見た目の変化はゆっくりです。そこでLiAiLでは、体重や見た目だけでなく、重量・回数・RPEの記録、椅子から手を使わずに立ち上がれる回数、階段を上った後の息の上がり方など、生活に近い指標も一緒に記録します。数字が少しずつ動くのを確認できると、「やっても変わらない」という不安が減り、継続につながります。変化が止まった時は、頑張りが足りないのではなく、睡眠・食事・疲労のどこかに原因がないかを先に確認します(Vol.22、Vol.23)。


LiAiL式「年齢と上手に付き合う5つの科学的介入」

  1. 「何歳からでも効く」を前提にする:平均50歳以上でも約20週で除脂肪量が約1.1kg増えた報告を踏まえ、始める年齢で諦めません。
  2. 筋肉の量より「筋力」を追う:筋力のほうが速く落ちるため、実際に重さを扱う練習を続けます。
  3. 週2回・全身から始める:1種目2〜3セット、RPE7〜8で、動作の確認を優先します。
  4. 重量は2.5〜5%ずつ上げる:3セットすべて目標回数を超えたら小さく上げます。
  5. 回復の余裕を先に確保する:睡眠・食事を整え、疲れを感じたら量を50〜60%に落とします。

※心疾患、高血圧、骨粗しょう症、関節の痛みなどの持病がある方、服薬中の方は、始める前に必ず医師に相談してください。胸の痛み、めまい、息苦しさが出た場合は、すぐに中止して受診してください。


まとめ|年齢は「やめる理由」ではなく「設計を変える理由」

土曜連載の中から、今回のテーマに関係の深い回を振り返ります。

  • Vol.5:漸進的過負荷は、小さな刻みで続けるもの
  • Vol.10:RPEで、その日の状態に合わせる
  • Vol.13:動かしやすさを保つのも、トレーニングの一部
  • Vol.22・23:睡眠とストレスが、回復の余裕を決める
  • Vol.24:疲れたら、量を落として使う
  • Vol.25:年齢で変わるのは、効果ではなく回復の余裕

次週Vol.26では、「姿勢と筋力の科学」を解説する予定です(※テーマはご指示に合わせて変更します)。


✒️ 執筆者プロフィール

乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表

米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムースとウメを娘のように愛する、誠実な伴走者。

(👉 代表・乳井の詳しいプロフィールはこちら)
(👉 note「臨床解剖学(図解)」トレーナー向け解説記事はこちら)


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LiAiL 運営会議|本日のまとめ

「何歳からでも効く。ただし回復のペースは変わる」って整理、50代のお客さんにそのまま伝えられそう!重量を2.5〜5%ずつ上げる計算例も分かりやすかったよ🐾

オレは犬だから、人間の年齢だと何歳なんだ?ま、散歩さえできればいつでも現役だけどな🐾

小太郎、その心意気は大事よ。続けられる人が一番強いの。来週のテーマも、パパが整理して発表するわ。🐾


川越パーソナルジムLiAiL代表乳井雅和