【水曜連載25】プロアスリートの技術を一般に|サプリメントの常識を疑え|LiAiL
パパ、ジムでBCAAを飲んでる人をよく見かけるんだけど、筋トレにはBCAAって必須のサプリなの?プロテインとどっちが大事なの?🐾
ムース、BCAAは必須アミノ酸9種類のうちの3種類だけなの。研究者の間でも評価が分かれているのよ。パパ、その本当の位置づけを語りなさい。🐾
皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
(👉 代表・乳井の詳しいプロフィールはこちら)
22,000セッションを超える指導の中で、「BCAAを飲んでいるのですが、プロテインは必要ですか」「BCAAを飲めば食事は適当でも大丈夫ですか」というご質問を何度もいただいてきました。サプリメントは手軽に取り入れられる分、土台となる食事や睡眠より先に手が伸びてしまいがちです。今週Vol.25のテーマは、「サプリメントの常識を疑え。BCAAは本当に必要か」です。
(👉 【水曜連載Vol.18】プロテインタイミングの常識を疑えはこちら)
(👉 【水曜連載Vol.19】炭水化物断ちの常識を疑えはこちら)
(👉 【水曜連載Vol.23】筋肉痛の常識を疑えはこちら)
(👉 【水曜連載Vol.24】有酸素運動の常識を疑えはこちら)
先に結論をお伝えします。BCAAを飲むこと自体が悪いわけではありません。ただし、「BCAAさえ飲めば筋肉がつく」という期待は、研究の裏付けが十分とは言えません。優先すべきは、その手前にある食事の総たんぱく質量です。
1. BCAAとは何か。なぜ「筋トレの定番サプリ」になったのか
BCAA(分岐鎖アミノ酸)とは、ロイシン・イソロイシン・バリンの3つのアミノ酸の総称です。体内で作れない必須アミノ酸(EAA)9種類のうちの3つにあたります。なかでもロイシンは、筋肉でのタンパク質合成を促す特別な役割を持つことが知られています。
この「ロイシンの特別な役割」が広く知られたことで、「BCAAを飲めば筋肉の合成スイッチが入る」という分かりやすいイメージが定着し、BCAAは長年トレーニング前後の定番サプリになりました。
ここに一つの疑問が生じます。筋肉のタンパク質は、20種類のアミノ酸から作られています。スイッチ役のアミノ酸だけを摂って、材料となる他のアミノ酸が足りなくても、筋肉は本当に増えるのか。これが、BCAAの評価が分かれている核心です。
2. 見解が分かれるエビデンス。2つの立場を整理する
① 「BCAAだけでも筋タンパク質合成は高まる」とする研究
Jackmanらの研究(2017)は、筋力トレーニング後にBCAAだけを摂取した場合の反応を調べました。使われたBCAAは5.6gで、これはホエイプロテイン約20gに含まれるBCAAの量に相当します。トレーニング後に、BCAAの飲料とプラセボ(見た目の同じ偽の飲料)を比べたところ、筋原線維のタンパク質合成はBCAA群の方が22%高いという結果でした(BCAA群0.110%/時、プラセボ群0.090%/時)。
ただし、この研究が測ったのは摂取後4時間のタンパク質合成の速さで、筋肥大そのものを長期で追跡したものではありません。「短時間の合成反応が高まった」ことと、「数ヶ月後に筋肉が大きくなる」ことは、別の問いです。
② 「BCAAだけでは、筋肉を作る材料が足りない」とする見方
一方、Wolfeによる総説(2017)は、タンパク質合成には9種類すべての必須アミノ酸が十分に揃っている必要があると指摘しています。BCAAのような偏った組み合わせを摂ると、体内に蓄えられた他のアミノ酸を一時的に利用して合成が高まることはあっても、それは持続的な筋肉の増加を意味しないという趣旨です。
そのうえでWolfeは、「食事由来のBCAAが筋タンパク質合成を高め、筋肉を作る方向の反応をもたらす」という主張は根拠が十分でない(unwarranted)と結論づけています。また、この総説は系統的レビューやメタ分析ではなく、論点を整理した総説(レビュー)です。
2つの立場をまとめると、「BCAAを摂ると短時間の合成反応が高まる可能性はあるが、材料となる他のアミノ酸が揃わなければ、筋肉を増やすという結果にはつながりにくい」というのが、現時点で最も妥当な理解です。
3. 数字と現場から見るBCAAの位置づけ
簡単な計算で、食事から摂るたんぱく質とBCAAサプリの関係を確認してみます。Vol.18で解説した総摂取量の目安(体重1kgあたり1.6〜2.2g)を使います。
- 体重70kgの場合の1日のたんぱく質量は、70 × 1.6〜2.2 = 112〜154g
- ホエイ並みのBCAA含有率(20gあたり5.6g、つまり28%)を仮定すると、112〜154 × 0.28 = 約31〜43gのBCAA
- 研究で使われたBCAA5.6gは、この量の約13〜18%(5.6 ÷ 43 と 5.6 ÷ 31 から計算)
つまり、総たんぱく質量を確保できている方は、食事やプロテインだけで、すでに研究で使われたBCAA量の数倍を摂っている計算になります。これは全てのたんぱく質がホエイ並みの含有率だと仮定した単純な目安で、実際の含有率は食品によって異なります。それでも、「食事が足りている人が、さらにBCAAを足す意味は小さい可能性が高い」ことの規模感はつかめるはずです。
実際の指導現場で多いのは、食事のたんぱく質が不足したままBCAAだけを購入しているケースです。この場合、BCAAに期待するより、まず総たんぱく質量を満たす方が、はるかに効果的です。なお、不足を補うのであれば、必須アミノ酸が揃ったプロテインの方が、BCAAのみより理にかなっています。
📚 専門的エビデンス
Wolfe RR. “Branched-chain amino acids and muscle protein synthesis in humans: myth or reality?” Journal of the International Society of Sports Nutrition, 2017;14:30.
PubMedで詳しく見る
Jackman SR, Witard OC, Philp A, Wallis GA, Baar K, Tipton KD. “Branched-chain amino acid ingestion stimulates muscle myofibrillar protein synthesis following resistance exercise in humans.” Frontiers in Physiology, 2017;8:390.
PubMedで詳しく見る
Wolfe(2017)は、BCAAは必須アミノ酸9種のうちの3種にすぎず、筋タンパク質合成には全てのアミノ酸が揃う必要があるとして、食事由来のBCAAが筋合成を高めるという主張は根拠が不十分と結論づけた総説です。Jackman(2017)は、筋力トレーニング後にBCAA5.6gのみを摂取した場合、摂取後4時間の筋原線維のタンパク質合成がプラセボより22%高かったと報告しています。ただし後者は短時間の合成反応を測ったもので、長期の筋肥大は検証していません。2つの研究は対立しているのではなく、「短時間の反応」と「筋肉が増えるという結果」を分けて考える必要があることを示しています。
4. LiAiL式「サプリメントを正しく選ぶ5つの介入」

- まず食事で総たんぱく質量を確保する:体重1kgあたり1.6〜2.2gを目安に、1日の総量が満たせているかを最優先で確認してください。サプリメントは、この土台がない状態では効果を期待しにくくなります。
- 不足を補うならBCAAよりプロテインを選ぶ:BCAAは必須アミノ酸9種のうち3種にすぎません。たんぱく質を補う目的であれば、全ての必須アミノ酸が含まれるプロテインの方が合理的です。
- 「飲んだ実感」ではなく「記録」で判断する:サプリメントを飲み始めたら、使用重量や回数、体重の推移を記録してください。Vol.23で解説した通り、感覚ではなく数値で効果を確認するのが基本です。
- 睡眠・食事・トレーニングの土台を先に整える:Vol.19の食事設計、Vol.24の総エネルギー収支、Vol.20の回復設計といった土台が整っていない状態で、サプリメントだけで差をつけることはできません。サプリメントは土台の上の微調整と位置づけてください。
- 持病・服薬中・妊娠中の方、競技会に出場する方は事前に確認する:サプリメントを始める前に、医師・薬剤師にご相談ください。競技会に出場する方は、禁止物質の混入リスクもあるため、アンチ・ドーピングの公式情報を確認してから選んでください。
まとめ:サプリメントは「土台の上の微調整」であり、土台の代わりにはならない
今回関連の深い過去の回を振り返ります。
- Vol.18:プロテインタイミングより総摂取量の方がはるかに重要である
- Vol.19:糖質制限は「痩せる」と「強くなる」で最適解が真逆になり得る
- Vol.24:脂肪燃焼ゾーンは実在するが、体脂肪の減少を決めるのはそれだけではない
- Vol.25:BCAAは材料の一部にすぎず、総たんぱく質量の確保が先である
次週Vol.26では、「クレアチンの常識を疑え。腎臓に悪いは本当か」を解説します。今回のサプリメントの話をさらに深掘りし、評価の高いサプリメントについての誤解を取り上げる内容です。
✒️ 執筆者プロフィール
乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表
米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムース・ウメ・小太郎を家族のように愛する、誠実な伴走者。
🎁 本気で身体を変えたいあなたへ
通常3,000円 → 【選べる3段階の入り口】
- 本気で変わりたい方: 体験トレーニング予約(2,500円・スタッフ指名可)
- まずは相談したい方: 公式LINEでの無料相談・質問(24時間受付)
- まだ迷っている方: LINE登録で「一生モノの美肌&痩身ロードマップPDF」をプレゼント
👉 【LiAiL公式LINE】を登録して、350日連載を並走する
LiAiL 運営会議:本日のまとめ
「サプリは土台の代わりじゃなくて、土台の上の微調整」。BCAAを買う前に、まず食事のたんぱく質量を見直すって大事だね🐾
オレのドッグフードにもBCAAは入ってるのか?何g飲めばいいんだ?🐾
小太郎、犬の栄養は獣医さんに聞きなさい。来週Vol.26は「クレアチンの常識を疑え」。腎臓に悪いは本当かを解説するわ。🐾











