【土曜連載16】強く・美しく・動ける体を作る科学|可変抵抗トレーニングの科学|LiAiL

2026.08.29

パパ、Vol.15で自分のスティッキングポイントが分かったんだけど、具体的にそこをどう鍛えればいいの?パーシャルレップ以外に方法があるって言ってたよね🐾

それが今日のテーマ「可変抵抗トレーニング」よ。チェーンやバンドを使うと、動作の位置によって負荷そのものを変化させられるの。パパ、その科学的根拠を語りなさい。🐾

皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
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パワーリフティング競技者として、大会前のピーキング期にチェーンやバンドを使ったトレーニングを取り入れることがあります。20,000本以上のセッションでも、通常のバーベルだけでは頭打ちになったお客様に可変抵抗を導入したところ、記録が動き出したケースを何度も見てきました。

今回のVol.16では、Vol.15で解説したスティッキングポイントを、チェーンやバンドを使った可変抵抗トレーニング(Variable Resistance Training:VRT)でどう狙い撃つかを科学的に解説します。

(👉 【土曜連載Vol.15】スティッキングポイントの科学はこちら
(👉 【土曜連載Vol.5】漸進性過負荷はこちら
(👉 【土曜連載Vol.1】重量を支配する神経系ハックはこちら

「重い重量を扱うだけ」がトレーニングの全てではありません。「どこで、どれだけ負荷をかけるか」を操作することも、立派な進化の手段です。


1. 可変抵抗トレーニング(VRT)とは何か。弱点を「狙い撃つ」技術

通常のバーベルトレーニングでは、動作のどの位置でも重さは一定です。しかしVol.15で解説した通り、関節角度によって発揮できる力は変動するため、一定の負荷は「一番弱い位置」に合わせて重量設定せざるを得ないという制約があります。

可変抵抗トレーニング(VRT)は、チェーンやゴムバンドをバーベルに取り付けることで、動作の関節角度が有利になる(力を発揮しやすい)局面ほど負荷が重くなるように設計する手法です。動作序盤は軽く、終盤に向かって重くなるため、身体の「強さの曲線」と負荷の曲線を一致させることができます。


2. 科学的根拠。なぜチェーンやバンドが有効なのか

通常のトレーニングより平均5.03kg多く筋力が向上

Soria-Gila MA, et al.(Journal of Strength and Conditioning Research, 2015)が7件の研究・235名を対象に行ったメタ分析では、VRT群は通常のトレーニング群と比較して、1RM換算で平均5.03kg(95%信頼区間:2.26〜7.80kg)多く筋力が向上したことが示されました。7週間以上の長期介入において、この差は統計的に有意(p<0.001)とされています。

高強度(80%1RM以上)で特に効果的

Lin, et al.(2022)のメタ分析によるサブグループ解析では、VRTの負荷が1RMの80%以上の場合、CRT(通常のトレーニング)に対する優位性が特に大きい(効果量0.76)ことが報告されています。一方、80%未満の負荷ではCRTとの差がほとんど見られなかったことから、VRTは特に高強度域のトレーニングで真価を発揮する手法であることが分かります。

📚 専門的エビデンス
Soria-Gila MA, Chirosa IJ, Bautista IJ, et al. “Effects of variable resistance training on maximal strength: a meta-analysis.” Journal of Strength and Conditioning Research, 2015.
PubMedで詳しく見る

本メタ分析は、チェーン・バンドを用いた長期(7週間以上)のVRTプログラムと通常のトレーニングを直接比較した数少ない研究の統合結果です。トレーニングされたアスリートと未トレーニング者の両方でデータを収集しており、幅広い層への応用可能性を示す重要な文献です。


3. LiAiLが実践するVRTの導入法。Vol.15との連携

実際の導入では、まずVol.15で特定した自分のスティッキングポイントを把握した上で、その位置以降で負荷が増すようチェーン・バンドの長さを調整します。これにより、動作序盤はVol.1の神経系を活かした爆発的な加速を、終盤はVRTによる追加負荷で弱点を集中的に強化できます。

女性クライアントの場合、火曜連載Vol.2で解説した月経周期による日々の筋力変動があるため、バンド・チェーンの追加負荷量は固定せず、その日のコンディションに応じて微調整することをお勧めします。(👉 【火曜連載Vol.2】月経周期の4フェーズと代謝変動はこちら


LiAiL式「可変抵抗トレーニングを正しく導入する5つの科学的介入」

  1. 追加負荷は全体の10〜20%程度から始める:チェーン・バンドによる可変負荷は、総負荷の10〜20%程度を目安に、バーベル本体の重量と組み合わせます。
  2. 1RMの80%以上の高強度セットで優先的に使う:研究で効果が確認されているのはこの強度帯です。軽い重量の高レップセットでは通常のバーベルで十分です。
  3. スティッキングポイント以降で負荷が最大になるよう設定する:Vol.15で特定した自分の弱点位置に合わせて、チェーンの垂れ具合・バンドの張力ポイントを調整します。
  4. 導入初期はフォーム習得を優先する:負荷が動作中に変化するため、通常のバーベル動作に慣れてから段階的に導入します。
  5. ピーキング期(Vol.11)に集中的に活用する:大会前の限られた期間に高強度域での刺激を集中させたい場合、VRTは特に有効な選択肢になります。

※チェーン・バンドの使用には正しい器具の取り扱いとフォーム習得が必要です。初めて導入する場合は、必ず経験者やトレーナーの指導のもとで行ってください。


まとめ:「負荷の曲線」を身体の「強さの曲線」に合わせる

土曜連載Vol.1〜16の流れを振り返ります。

  • Vol.1:神経系が重量を支配する
  • Vol.2:セット数・レップ数が筋肥大を決める
  • Vol.3:下ろす動作(エキセントリック)が筋肉を育てる
  • Vol.4:メカニカルテンションと代謝ストレスが相乗する
  • Vol.5:漸進性過負荷が成長の絶対条件
  • Vol.6:レップ帯ごとに効果が異なる
  • Vol.7:インターバルが筋力・筋肥大を左右する
  • Vol.8:頻度が回復と成長のバランスを決める
  • Vol.9:期分けが全ての要素を年間設計にまとめる
  • Vol.10:オートレギュレーションが設計図を現場で機能させる
  • Vol.11:ピーキングとテーパリングが疲労を記録に変換する
  • Vol.12:リカバリー手段は目的に応じて選ぶべきもの
  • Vol.13:ストレッチはタイミングで味方にも敵にもなる
  • Vol.14:呼吸が脊柱を支える天然のベルトになる
  • Vol.15:止まる場所には生体力学的な理由がある
  • Vol.16:可変抵抗で弱点を狙い撃つことができる

次週Vol.17では、「筋肉痛(DOMS)の正体|筋肉痛は成長のサインなのか」を解説します。「効いた気がする」筋肉痛の裏側にある生理学を、科学的に検証します。


✒️ 執筆者プロフィール

乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表

米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムースとウメを娘のように愛する、誠実な伴走者。

(👉 代表・乳井の詳しいプロフィールはこちら


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LiAiL 運営会議:本日のまとめ

5.03kgって数字で見ると説得力あるね!Vol.15で弱点を見つけて、Vol.16でそこを攻略するっていう2週連続の流れ、実践しやすそう🐾

オレのリードも伸びると引っ張る力が強くなるんだが、あれもチェーンと同じ原理か……?🐾

小太郎、それは伸縮性のあるリードなだけよ。来週Vol.17は「筋肉痛(DOMS)の正体」筋肉痛は本当に成長のサインなのかを解説するわ。🐾


川越パーソナルジムLiAiL代表乳井雅和

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