【火曜連載25】女性ホルモンと体型の科学|月経前の体重増加とむくみ|LiAiL

2026.11.03

パパ、生理前になると体重が増えて、足も顔もパンパンになるの…。これって太ったの?それともただのむくみ?🐾

結論から言うと、数日で増える数百グラム〜1kgほどの変化は、脂肪ではなく水分の可能性が高いの。ただし「全員が増える」とは言い切れないのよ。パパ、研究で分かっている範囲を丁寧に説明してあげて。🐾

皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
(👉 代表・乳井の詳しいプロフィールはこちら)
(👉 note「臨床解剖学(図解)」トレーナー向け解説記事はこちら)

前回Vol.24では「月経痛と運動」についてお伝えしました。今週Vol.25は、22,000セッションを超える指導の中で、体重計の数字に一喜一憂する女性の相談を数多く受けてきた立場から、「月経前の体重増加とむくみ。水分バランスとホルモンの科学」を解説します。

(👉 【火曜連載24】月経痛と運動はこちら)
(👉 【火曜連載3】プロゲステロンと食欲の暴走はこちら)
(👉 【火曜連載2】月経周期の4フェーズと代謝変動はこちら)
(👉 【火曜連載8】甲状腺ホルモンと代謝はこちら)

体重が増えると、つい食事を減らして焦ってしまいます。しかし月経前の数日間の体重の動きに合わせて、食事や運動を極端に変えると、かえって遠回りになることがあります。


1. まず結論。数日で増える体重は「脂肪」ではない

体脂肪は、短い期間では簡単には増えません。目安として、体脂肪1kgは約7,000〜7,700kcal分のエネルギーに相当すると言われています。たとえば「3日間で1kg増えた」としたら、それが脂肪だった場合、毎日、普段より約2,300〜2,600kcalも多く食べ続けたことになります(7,000〜7,700kcal ÷ 3日 ≒ 2,333〜2,567kcal)。月経前に食欲が増えることはあっても(Vol.3で解説しました)、毎日これだけ食べ続けるケースは多くありません。

つまり、数日単位で起こる体重の増減は、体の中の水分量や、腸の中の内容物の変化で説明できる部分が大きいと考えられます。では、その水分の動きにホルモンはどう関わっているのでしょうか。


2. ホルモンと水分バランス。エストロゲンとプロゲステロンの働き

📚 専門的エビデンス
Stachenfeld NS, Keefe DL. “Estrogen effects on osmotic regulation of AVP and fluid balance.” American Journal of Physiology – Endocrinology and Metabolism, 2002.
PubMedで詳しく見る

女性自身のホルモンを薬で一時的に抑えたうえで、エストロゲン単独(9名)、またはエストロゲンとプロゲステロンの併用(6名)を補充し、水分調節への影響を調べた実験です。エストロゲンは、尿を減らして水分を保つホルモン「バソプレシン(AVP)」が分泌され始める基準を、血液の濃さ(浸透圧)で275から271mOsm/kgへわずかに下げました。さらに、どちらの補充でも体の水分の保持が増え、併用ではナトリウム(塩分)の排出が減り、塩分や血圧の調節に関わるレニン・アンジオテンシン系が刺激されました。ただし、人数が非常に少ない小規模な実験です。

この分野の第一人者であるStachenfeldは、2008年のレビュー(Exercise and Sport Sciences Reviews)でも、同様の内容を整理しています。要点は次の通りです。

  • エストロゲンが優位な状態(黄体期や、エストロゲンを含むピルの服用中)では、バソプレシンや喉の渇きの反応が、より低い血液の濃さで始まる。
  • それでも、水そのものがため込まれやすくなるわけではなく、むしろナトリウム(塩分)の排出がわずかに減ることが、水分保持の主な理由と考えられている。
  • エストロゲンやプロゲステロンは、血液の量(血漿量)を増やす方向に働く。

要するに、月経前に体が「少し水分と塩分をため込みやすくなる」仕組みは、ホルモン実験から説明がつくのです。ただし、これらは薬でホルモンを調整した実験が中心であり、自然な月経周期の中で、実際にどれだけ水分が増えるかを直接示したものではありません。次に、実際の体重の動きを見てみましょう。


3. 実際の体重はどれくらい動くのか。研究結果は一致していない

月経周期にともなう体重や体内の水分量の変化を調べた研究は複数あり、結果は必ずしも一致していません。

  • 変化があったという報告:2023年に発表されたKanellakisらの研究(American Journal of Human Biology)では、体重が月経中に、その後の卵胞期より約0.5kg高く、体内の水分量が月経開始後の1週間で減ってから徐々に戻っていく傾向が報告されたと、後続の研究で紹介されています。1983年の研究(Byrd & Thomas)でも、周期の中で約0.34kgの体重変動が報告されています。
  • 大きな変化がなかったという報告:2025年にドイツで発表された17名の研究(Schröderら)では、体重・体水分量・脂肪量のいずれにも、月経周期にともなう統計的に有意な変化は認められませんでした。ほかにも、周期で体組成の測定値は変わらないとする報告が複数あります。

この結果からいえるのは、次の3点です。

  • 確認できている事実:体重の変動幅は、研究で見られた範囲では多くが数百グラム程度で、脂肪が増えたことを示す結果ではない。
  • 個人差が大きい:平均すると小さな変化でも、人によっては1kg以上増えて強いむくみを感じる方もいる、というのが現場の実感です(これは研究の数字ではなく、私の経験にもとづく感覚です)。
  • ピークの時期は研究によって異なる:「月経前に最も増える」とは限らず、月経中に最も重い、とする報告もある。

もう一つ知っておきたいのが、測定方法の限界です。体組成計(体の電気の流れやすさから推定するタイプ)は、体内の水分量が変わると、体脂肪率や筋肉量の数字まで動いて見えることがあります。研究の中でも、測定機器の種類によって、周期による変化の見え方が異なることが議論されています。月経前に体脂肪率が急に上がって見えても、それは実際の脂肪が増えたのではなく、水分の影響による見かけの変化である可能性があります。

つまり、「月経前に必ず何kg増える」という決まった数字はありません。大切なのは、自分の体が毎月どんなパターンで動くのかを、記録で知ることです。


4. 水分以外の要因。食欲と腸の影響も見逃さない

月経前の体重の動きは、水分だけでは説明しきれません。Vol.3で解説したように、プロゲステロンが高い時期には食欲が増えやすくなります。また、Vol.2で触れた通り、黄体期は基礎代謝がわずかに上がる反面、食事量も増えやすい時期です。さらに、プロゲステロンには腸の動きをゆるやかにする働きがあるため、便がたまりやすくなり、体重やお腹の張りに影響することがあります(ただし、体重への影響の大きさを直接調べた研究は、今回確認できていません)。

加えて、塩分の多い食事、お酒、睡眠不足、運動量の急な変化なども、むくみの感じ方に影響します。月経前の体重増加は、ホルモンによる水分の変化に、食事や生活習慣が重なったものと考えると、対策を立てやすくなります。


5. 実践編。体重を「同じ条件」で比べる

月経前の体重増加に振り回されないための、一番確実な方法は、測り方を揃えることです。次の例を見てください(数字は説明用の例です)。

  • 先月の月経開始7日前の体重:52.0kg → 今月の同じ時期:52.6kg(差 +0.6kg)。
  • 先月の月経終了後1週間の平均:51.2kg → 今月:51.0kg(差 −0.2kg)。

この例では、月経前は+0.6kgでも、月経が終わった後の平均は少し減っています。このように、同じ時期同士で比べ、さらに1週間の平均で見ると、本当の体重の傾向が見えてきます。具体的な方法は次の通りです。

  • 測る条件を揃える:朝、起床後にトイレを済ませてから、同じ服装で測る。
  • 毎日記録する:月経の開始日もメモして、1か月分の動きを見る。
  • 同じ時期同士で比べる:「先月の月経前」と「今月の月経前」を比べる。
  • 塩分を急に増やさない:外食や加工食品が続くと、むくみを感じやすくなる。一般的な健康目標として、WHOは成人の食塩摂取を1日5g未満に勧めている(月経前に限った推奨ではありません)。
  • 水分は極端に減らさない:むくみが気になっても、水分を減らす必要があるとは確認できていません。自己判断での極端な水分制限や、利尿薬の使用は避けてください。
  • 軽く動く:ウォーキングなどの軽い運動は、むくみの感じ方を和らげる助けになる可能性があります(月経前のむくみに限った効果は、今回の論文では確認できていません)。

記録は、最低でも3周期(約3か月)続けると、自分のパターンが見えやすくなります。「月経開始の何日前から増え始めるか」「何日目に戻るか」「どのくらいの幅で動くか」の3つが分かれば、体重が増えても「いつもの動きだ」と落ち着いて受け止められます。逆に、パターンから外れて増え続ける場合は、水分以外の要因を疑うサインになります。睡眠不足や強いストレス(Vol.7で扱ったコルチゾール)が重なる時期は、むくみの感じ方も強くなりやすいため、睡眠時間も一緒にメモしておくと参考になります。


6. 注意したいサインと、よくある疑問

月経前のむくみは多くの場合、生理的な変化ですが、次のような場合は別の原因の可能性があります。短期間で急に体重が増える、片方の足だけが腫れる、息切れや尿量の減少がある、月経が終わってもむくみが引かない場合は、心臓、腎臓、甲状腺(Vol.8)などの病気が隠れていることがあるため、早めに医療機関を受診してください。また、月経前の気分の落ち込みやイライラが強く、生活に支障が出る場合は、PMS(月経前症候群)として婦人科で相談できます。

Q1. 月経前は食事を減らして調整すべき?
体重の数字が増えたからと、短期間で食事を大きく減らすことはおすすめしません。エネルギー不足が続くと、Vol.23で解説したように月経自体が乱れることがあります。

Q2. むくみ対策のサプリや市販薬は効く?
月経前のむくみに対する効果は、今回の論文では確認できていません。医薬品やサプリメントを使う場合は、医師や薬剤師に相談してください。

Q3. ピルを飲んでいるとむくみやすい?
エストロゲンを含むピルは、実験では水分の調節に影響する可能性が示されていますが(Vol.15も参照)、個人差が大きく、むくみがどの程度出るかは一概に言えません。気になる場合は処方した医師に相談してください。自己判断で中止しないでください。


7. LiAiL式「月経前の体重増加と上手に付き合う5つの視点」

  1. 数日の増加を「脂肪」と決めつけない:1kg増えるには、約7,000〜7,700kcalの余剰が必要。数日単位の変化は水分の影響が大きい。
  2. 測る条件を揃え、1週間平均で見る:朝、トイレ後、同じ服装で毎日測る。単日の数字ではなく、平均と傾向を見る。
  3. 同じ時期同士で比べる:「先月の月経前」と「今月の月経前」を比べる。月経周期の別の時期と比べない。
  4. 極端な食事制限や水分制限をしない:体重が増えた日に食事や水分を急に減らさない。軽く動き、普段どおりの食事を保つ。
  5. 異常なむくみは我慢せず受診する:急な体重増加、片足だけの腫れ、息切れ、尿量の減少などがあるときは、自己判断で様子を見ず、医療機関にご相談ください。

まとめ。月経前の体重は「水分」。焦らず、同じ条件で記録する

火曜シリーズこれまでの流れを振り返ります。

  • Vol.2:月経周期の4フェーズと代謝変動
  • Vol.3:プロゲステロンと食欲の暴走
  • Vol.8:甲状腺ホルモンと代謝
  • Vol.15:経口避妊薬(ピル)とホルモンの科学
  • Vol.23:女性アスリートの無月経とRED-S
  • Vol.24:月経痛と運動

次週Vol.26では、「PMS(月経前症候群)と運動・栄養。気分と体調の波を和らげる方法」を解説します。


✒️ 執筆者プロフィール

乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表

米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムース・ウメ・小太郎を家族のように愛する、誠実な伴走者。

(👉 代表・乳井の詳しいプロフィールはこちら)
(👉 note「臨床解剖学(図解)」トレーナー向け解説記事はこちら)


🎁 本気で身体を変えたいあなたへ

通常3,000円 → 【選べる3段階の入り口】

  1. 本気で変わりたい方: 体験トレーニング予約(2,500円・スタッフ指名可)
  2. まずは相談したい方: 公式LINEでの無料相談・質問(24時間受付)
  3. まだ迷っている方: LINE登録で「一生モノの美肌&痩身ロードマップPDF」をプレゼント

👉 【LiAiL公式LINE】を登録して、350日連載を並走する


LiAiL 運営会議:本日のまとめ

月経前の体重増加は、脂肪じゃなくて水分の影響が大きいんだね。でも研究結果は一致していなくて、個人差も大きいってところが大事だ🐾

1kg太るには7,000kcal以上かかるんだろ。数日で増えた数字に慌てて飯を減らすのは、一番やっちゃいけないやつだな。同じ条件で測って、同じ時期同士で比べろよ🐾

小太郎、その通りよ。来週Vol.26は「PMSと運動・栄養」。気分と体調の波を和らげる方法を、エビデンスで見ていくわ。🐾


川越パーソナルジムLiAiL代表乳井雅和