【水曜連載16】プロアスリートの技術を一般に|ウォームアップの常識を疑え|LiAiL

2026.08.26

パパ、トレーニング前は入念にストレッチしてから始めるのが基本だと思ってたんだけど……違うの?🐾

実はそこ、多くの人が誤解しているポイントなの。長時間の静的ストレッチを直前にやると、逆に筋力が落ちるという研究結果があるのよ。パパ、その通説の裏側を語りなさい。🐾

皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
(👉 代表・乳井の詳しいプロフィールはこちら

20,000セッションを超える指導の中で、「トレーニング前はしっかりストレッチしましょう」という説明を、私自身も含めて業界全体が長年当たり前のように行ってきました。Vol.13ではニーインの通説を、Vol.14では握力の壁を、Vol.15では肩甲骨後退のトレードオフを疑いました。今週Vol.16も同じ切り口で「ウォームアップの常識を疑え|静的ストレッチが直前のパフォーマンスを下げる理由」を解説します。

(👉 【水曜連載Vol.1】スクワットの常識を疑えはこちら
(👉 【水曜連載Vol.13】ニーインの常識を疑えはこちら
(👉 【水曜連載Vol.15】ベンチプレスの肩甲骨後退を疑えはこちら

「体を伸ばしてから動かす」これは一見理にかなっているようで、直前に行うと逆効果になる場合があります。ストレッチそのものが悪いのではなく、「いつ・どれくらい」行うかが問題なのです。


1. なぜ「静的ストレッチ=ウォームアップの基本」とされてきたのか

静的ストレッチ(Static Stretching)とは、反動をつけずに筋肉をゆっくり伸ばし、一定時間その姿勢を保持するストレッチ方法です。柔軟性の向上、怪我予防、リラックス効果などが期待できるとされ、長年「運動前は入念に静的ストレッチをすべき」という指導が、学校の体育からスポーツ現場まで広く行われてきました。

柔軟性を高めるという効果自体は事実であり、静的ストレッチが「悪」というわけではありません。問題は、その効果とタイミングを混同し、「筋力を発揮する直前」に長時間行ってしまうことにあります。


2. 通説を覆すエビデンス|長時間の静的ストレッチは筋力を低下させる

2000年代以降、スポーツ科学の分野では「直前の静的ストレッチが筋力・パワー発揮を低下させる(Stretch-Induced Force Deficit)」という現象が数多く報告されるようになりました。筋肉と腱の硬さ(スティフネス)が一時的に低下することで、力を効率よく伝える能力そのものが落ちると考えられています。

重要なのは「ストレッチ時間」が鍵を握っているという点です。短時間であれば大きな悪影響はなく、一定時間を超えると筋力低下が顕著に現れます。「とりあえず体をしっかり伸ばしておこう」という感覚的な判断が、実は逆効果になっているケースが少なくありません。


3. 現場での正しい使い分け「動かして温める」と「伸ばして緩める」は別の役割

実際の指導現場では、トレーニング直前のウォームアップは動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)と種目特異的な軽重量セットを中心に組み立てるべきです。動的ストレッチは反動や動きを伴いながら関節を動かす方法で、筋温を上げつつ神経系を活性化させる効果があり、筋力低下のリスクがほぼありません。

一方、可動域そのものを長期的に広げる目的の静的ストレッチは、トレーニング直前ではなくトレーニング後、あるいは完全に別のセッション(休息日や就寝前など)で行うのが合理的です。「柔軟性を上げたいから」という理由で、トレーニング直前に長時間の静的ストレッチを組み込むのは、目的と手段がずれた典型的な誤りです。

📚 専門的エビデンス
Kay AD, Blazevich AJ. “Effect of acute static stretch on maximal muscle performance: A systematic review.” Medicine & Science in Sports & Exercise, 2012;44(1):154-164.
PubMedで詳しく見る

本研究は106件の先行研究を対象とした系統的レビューです。1筋群あたり60秒以上の静的ストレッチを行った場合、筋力測定値が平均で約7.5%低下することが示されました。一方で、45秒未満の静的ストレッチでは、有意な筋力低下は確認されませんでした。「ストレッチ時間の長さ」が筋力低下の主要な決定因子であることを裏付ける、この分野の代表的なエビデンスです。


4. LiAiL式「ウォームアップを正しく設計する5つの介入」

  1. トレーニング直前は動的ストレッチ・モビリティドリルを中心にする:レッグスイングやワールドグレイテストストレッチなど、動きを伴うウォームアップで筋温と神経系を活性化させてください。筋力低下のリスクがなく、動作の準備としても実践的です。
  2. 静的ストレッチを行う場合は45秒未満に抑える:特定の関節の可動域を直前に確保したい場合でも、1筋群あたりの保持時間を45秒未満に留めれば、筋力への悪影響は最小限に抑えられます。
  3. 可動域改善目的の長時間ストレッチはトレーニング後に回す:柔軟性そのものを高めたい場合は、トレーニング終了後のクールダウンや、完全に別のセッションで60秒以上のストレッチを行ってください。目的とタイミングを分けることが重要です。
  4. 種目特異的なウォームアップセットを必ず組み込む:動的ストレッチの後は、本番セットの重量に向けて軽重量から段階的に重量を上げるウォームアップセットを行ってください。神経系と関節を実際の負荷パターンに慣らすことができます。
  5. 慢性的な可動域制限がある場合は自己判断で継続しない:ウォームアップの工夫だけでは改善しない強い可動域制限や左右差がある場合、他の要因が関与している可能性があります。無理に継続せず、医療機関や専門家への相談を優先してください。

まとめ:「伸ばしてから動かす」ではなく「動かして温める」が直前の正解

水曜シリーズこれまでの流れを振り返ります。

  • Vol.1:スクワットの「常識」の多くは個体差を無視している
  • Vol.13:ニーインは「硬さ」ではなく「止められないから」起こる
  • Vol.15:肩甲骨後退は安全性とパフォーマンスのトレードオフである
  • Vol.16:静的ストレッチは「時間」と「タイミング」を間違えると逆効果になる

次週Vol.17では、「クールダウンの常識を疑え|アイシングが筋肥大を妨げる理由」を解説します。今回のウォームアップの話と対になる、トレーニング後の対応を深掘りする内容です。


✒️ 執筆者プロフィール

乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表

米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムース・ウメ・小太郎を家族のように愛する、誠実な伴走者。

(👉 代表・乳井の詳しいプロフィールはこちら


🎁 本気で身体を変えたいあなたへ

通常3,000円 → 【選べる3段階の入り口】

  1. 本気で変わりたい方: 体験トレーニング予約(2,500円・スタッフ指名可)
  2. まずは相談したい方: 公式LINEでの無料相談・質問(24時間受付)
  3. まだ迷っている方: LINE登録で「一生モノの美肌&痩身ロードマップPDF」をプレゼント

👉 【LiAiL公式LINE】を登録して、350日連載を並走する


LiAiL 運営会議:本日のまとめ

「動かして温める」vs「伸ばして緩める」——目的で分けるってシンプルで分かりやすい!体育の授業から見直したくなる🐾

オレは散歩前に伸びをするんだが、あれは動的ストレッチと静的ストレッチどっちなんだ?🐾

小太郎、それは起き抜けの気持ちよさよ。来週Vol.17は「クールダウンの常識を疑え」——アイシングが筋肥大を妨げる理由を解説するわ。🐾


川越パーソナルジムLiAiL代表乳井雅和

LATEST