【水曜連載26】プロアスリートの技術を一般に|クレアチンの常識を疑え|LiAiL
パパ、お客さんが「クレアチンは腎臓に悪いって聞いたから、効果があるのは知ってるけど飲めない」って言ってたんだけど、本当に腎臓に悪いの?🐾
ムース、その噂は「クレアチン」と「クレアチニン」という似た名前の混同から広まった面が大きいのよ。健康な人では腎臓への悪影響を示す証拠は見つかっていないわ。パパ、その真実を語りなさい。🐾
皆さん、こんにちは。LiAiL代表の乳井雅和です。
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22,000セッションを超える指導の中で、「クレアチンは腎臓に悪いと聞いたので、飲むのをやめました」「興味はあるけれど不安で試せません」というお声を何度もいただいてきました。クレアチンは、パワーリフティングをはじめとする筋力系の世界で最も話題に上るサプリメントの一つです。それだけに、噂が一人歩きしやすい分野でもあります。今週Vol.26のテーマは、「クレアチンの常識を疑え。腎臓に悪いは本当か」です。
(👉 【水曜連載Vol.18】プロテインタイミングの常識を疑えはこちら)
(👉 【水曜連載Vol.23】筋肉痛の常識を疑えはこちら)
(👉 【水曜連載Vol.24】有酸素運動の常識を疑えはこちら)
(👉 【水曜連載Vol.25】サプリメントの常識を疑えはこちら)
先に結論をお伝えします。健康な成人が推奨される量を守って使う限り、クレアチンが腎臓に障害を起こすという証拠は、これまでの研究では見つかっていません。ただし、腎臓に持病のある方は別で、事前に医師へ相談することが前提になります。
1. クレアチンとは何か。なぜ「腎臓に悪い」と言われるのか
クレアチンは、筋肉の中にあり、短時間で高い出力を出す運動のエネルギー供給に関わる物質です。肉や魚などの動物性食品にも含まれ、サプリメントとしても広く使われています。国際スポーツ栄養学会(ISSN)は2017年の見解で、クレアチンの中でもモノハイドレートという形が、高強度運動の能力と除脂肪量を高める栄養系サプリメントとして最も効果的であると位置づけています。
では、なぜ「腎臓に悪い」という噂が広まったのでしょうか。Antonioらのレビュー(2021)は、その背景を2つ挙げています。一つは、クレアチンとクレアチニンの混同です。クレアチニンはクレアチンが体内で変化してできる物質で、健康な腎臓はこれを血液から取り除きます。そのため、血液中のクレアチニン値は腎機能を調べる目安として使われています。
もう一つは、1998年に報告された1件の症例です。クレアチンを飲み始めた後に血液中のクレアチニンが上昇し、腎機能が悪化していると判断されて、服用の中止を勧められた事例でした。ここで問題になるのは、クレアチンを摂取すれば、腎臓が傷んでいなくても血液や尿のクレアチニン値は上がり得るという点です。数値だけを見ると、腎臓が悪くなったように見えてしまうのです。
2. エビデンスで見る。健康な人での腎臓への影響
① 推奨量での使用で、腎障害の証拠は見つかっていない
Antonioらのレビュー(2021)は、実験的で管理された研究を整理したうえで、推奨される量であれば、健康な人で腎障害や腎機能の低下は起こらないと結論づけています。Kreiderらの国際スポーツ栄養学会の見解(2017)でも、長期の使用に関する研究が検討されており、たとえば5〜10g/日を21か月続けた研究でも、臨床検査上の指標に大きな影響は報告されていません。
一般に、維持のための量とされる3〜5g/日は、この長期研究の用量(5〜10g/日)の範囲内か、それ以下にあたります。「腎臓に負担がかかるほど大量に飲む」というイメージとは、実際の推奨量はかなり距離があります。
② クレアチニンの上昇は「見かけの変化」である可能性が高い
同レビューは、クレアチンの摂取や肉の多い食事によって、血液や尿のクレアチニンが一時的に上がることがあり、それだけで腎機能の低下を意味するとは限らないと説明しています。血液のクレアチニン値は便利な指標ですが、クレアチンのサプリメントを使っている人や肉をたくさん食べる人では、解釈に注意が必要です。腎機能を評価する際には、シスタチンCなど他の指標が併せて使われることもあります。
③ 限界と注意点
ここまでの結論は、あくまで健康な成人を中心とした研究にもとづくものです。腎臓に持病のある方については、始める前に医師へ相談することが推奨されています。また、今回取り上げた2つの文献は、どちらも専門家チームがまとめたナラティブな総説・見解で、サプリメント業界との関係が開示されている研究者も含まれます。内容をそのまま絶対視せず、「健康な成人では現時点で腎障害の証拠は乏しい」という慎重な受け止め方が適切です。
📚 専門的エビデンス
Kreider RB, Kalman DS, Antonio J, et al. “International Society of Sports Nutrition position stand: safety and efficacy of creatine supplementation in exercise, sport, and medicine.” Journal of the International Society of Sports Nutrition, 2017;14:18.
PubMedで詳しく見る
Antonio J, Candow DG, Forbes SC, et al. “Common questions and misconceptions about creatine supplementation: what does the scientific evidence really show?” Journal of the International Society of Sports Nutrition, 2021;18:13.
詳しく見る
Kreider(2017)は、クレアチンモノハイドレートが高強度運動の能力と除脂肪量を高めるサプリメントとして最も効果的であり、長期の使用でも臨床検査上の問題は報告されていないとする国際スポーツ栄養学会の見解です。Antonio(2021)は、国際的な専門家チームがまとめたレビューで、クレアチンの摂取は推奨量であれば健康な人の腎障害や腎機能低下を引き起こさないこと、血液や尿のクレアチニンの一時的な上昇は腎機能の低下を意味しない可能性が高いことを整理しています。いずれもナラティブな総説・見解である点にご注意ください。
3. 現場で気をつけたいこと。健康診断と体重の変化
実際の指導現場で最も気をつけたいのは、健康診断や血液検査のときの誤解です。クレアチンを飲んでいる方が、何も伝えずに血液検査を受けると、クレアチニンの数値だけを見て「腎機能が低下している可能性」と指摘されるかもしれません。これは、前章で触れた「見かけの変化」にあたります。検査の前に、クレアチンを使っていることを医師に伝えておくことが、不要な心配や誤った判断を避ける一番の近道です。
もう一つは、体重の変化です。Antonioらのレビュー(2021)によると、クレアチンで最もよく見られる副作用は、飲み始めの最初の数日間に起こる水分の保持です。体重が増える場合があるため、体重階級のある競技の方や、減量中の方は、このことを知ったうえで使うタイミングを考える必要があります。
なお、Vol.25で解説した通り、サプリメントは土台の上の微調整です。Vol.18で解説した総たんぱく質量、Vol.23で解説した記録による効果の確認、睡眠と回復といった土台が整っていない状態で、クレアチンだけで大きな差をつけることはできません。
4. LiAiL式「クレアチンを正しく使う5つの介入」

- 選ぶならクレアチンモノハイドレートにする:最も研究が多く、効果と安全性の根拠が最も厚い形です。他の形が優れているという根拠は乏しいため、まずはモノハイドレートから検討してください。
- 維持量の目安は1日3〜5gを毎日続ける:ISSNの見解では、維持に必要な量は一般に1日3〜5gとされています。たくさん飲むほど効果が増えるわけではないため、量を増やすより、毎日続けることを優先してください。
- 健康診断・血液検査の前に、クレアチンを使っていることを医師に伝える:クレアチニン値が上がって見えることがあります。数値だけで判断されないよう、検査の際に申告してください。
- 飲み始めの体重増加を想定しておく:最初の数日は水分の保持で体重が増えることがあります。体重階級のある競技の方は、試合の時期から逆算して使い始めるタイミングを検討してください。
- 腎臓の持病・服薬中・妊娠中の方、競技会に出場する方は事前に確認する:腎臓に持病のある方や服薬中の方、妊娠中の方は、始める前に必ず医師・薬剤師にご相談ください。競技会に出場する方は、禁止物質の混入リスクもあるため、アンチ・ドーピングの公式情報を確認してから製品を選んでください。
まとめ:「腎臓に悪い」は混同から広がった噂であり、健康な成人では証拠は乏しい
今回関連の深い過去の回を振り返ります。
- Vol.18:プロテインタイミングより総摂取量の方がはるかに重要である
- Vol.23:感覚ではなく、記録された数値で効果を判断する
- Vol.25:サプリメントは土台の上の微調整であり、土台の代わりにはならない
- Vol.26:クレアチンの腎臓への悪影響は、クレアチニンとの混同から広がった面が大きい
次週Vol.27では、「睡眠の常識を疑え。寝だめで睡眠不足は取り戻せるか」を解説します。サプリメントの話から一歩戻り、全ての土台となる睡眠を深掘りする内容です。
✒️ 執筆者プロフィール
乳井 雅和(Masakazu Nyui)
パーソナルジム LiAiL(リアイル)代表
米国大学にて解剖学、栄養学、運動生理学を専攻。13年にわたり製薬・医療機器業界に従事し、数百件以上の手術現場への立ち合いを通じて、人体の内部構造をリアルに把握してきた類稀な経験を持つ。その圧倒的な知識量は、一般のお客様のみならず、各競技のプロアスリートからも厚い信頼を寄せられるほど。「根拠のない指導で、お客様の大切なお金と時間を奪う嘘の情報をなくしたい」という強い信念を持ち、フィットネス業界全体のレベルアップを自らの使命としている。科学的な「正しい設計図」に基づき、お客様が「今の自分が一番好き」と胸を張れる人生をプロデュース。愛犬のムース・ウメ・小太郎を家族のように愛する、誠実な伴走者。
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LiAiL 運営会議:本日のまとめ
「クレアチンとクレアチニンは別物」。名前が似てるだけで誤解が広がってたなんて、検査の前に一言伝えておくのも大事だね🐾
オレは肉が大好きなんだが、肉にもクレアチンは入ってるのか?🐾
小太郎、肉や魚にも含まれているわ。犬の食事は獣医さんに聞きなさいね。来週Vol.27は「睡眠の常識を疑え」。寝だめで睡眠不足は取り戻せるかを解説するわ。🐾











